転職時期の見極め方 失敗・後悔しない3つの鉄則
経営者JP社長 井上和幸
ケース2「今の会社よりもっと自分を生かしてくれる場を」
「今の会社では自分が十分に生かされていないと感じるのです。もっと自分が裁量と責任を持てる転職先を紹介してもらえないでしょうか」
「会社の仕組みや制度が整っていないせいで、業績を上げることができません。もっと会社のブランドやアセット(資産)のある会社に転職したいです」
このような転職相談を持ちかけるミドル・シニアも少なくありません(一般的にはこのような相談がほとんどだと言えるでしょう)。一見、ケース1と似たように見えるかもしれませんが、実際は全く異なります。この場合、私が本人に勧めることは、「転職を考える前に、まず今の会社で頑張れるところまで頑張りましょう」です。
もちろん、本人が言う通り、会社側の人事や組織が原因となって、本来は力のある人を生かしきれないことはあり得ます。その場合は、現在の勤め先に見切りをつけて、新天地へすみやかに移籍すべきです。
ただ、話をしっかり聞いてみると、8割、9割の割合で、当人側に問題があるケースがほとんどです。主な原因は単純な頑張り不足のほか、会社側の課題・テーマの認識不足・誤解、上長や同僚、部下とのコミュニケーション不足などが挙げられます。何が担当業務上での成功要因であるかについて把握できていないとか、把握する努力をしていないといったケースもあります。自分の側から職場の人間関係をギクシャクしたものにしてしまっている人もいます。
現状に不満を抱え、転職を考えるミドル・シニアは非常に多いのですが、そのまま転職したとしても、必ず次の職場でまた同様の状態に陥ります。そこでまた転職を考え、実行する。この負の連鎖が、このところ増えている短期離職・転職を繰り返す人を累々と生み出してしまっているのです。
「今の立場に不満がある。環境に恵まれていない」と思っているときは、自分自身に解決すべき問題を抱えていることが多い。そういうときに考えるべきことは転職ではなく、現職でのもう一踏ん張り、ふた踏ん張りです。転職はそれを解決したあとまで、お預けです。