35歳からの異業種転職 本当に「無謀な挑戦」なのか
ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行
成功・失敗事例の共通点
【成功事例(1)】
食品メーカーの人事総務 → ECサイト運営会社の人事総務(38歳・男性・Aさん)
AさんはM&A(合併・買収)の後の事業統合の経験があったことがポイントになり、同様にM&Aをいくつか経験した企業に採用されました。本人の重視したポイントは「現場の第一線で責任範囲が大きいかどうか」という点。Aさんにとっては、価値観の異なる企業統合の進め方についてこれまでの経験を生かしていける点、上司から大きな裁量を任され、自分が矢面に立って方向付けができる点が噛み合って、今も活躍しています。自分が大事にする働き方をしっかり事前に確認・約束できてていたことが成功のポイントになっています。
【成功事例(2)】
インターネット広告の新規開拓営業 → コンビニエンスストアFC店舗の開拓(42歳・男性・Bさん)
転職活動を開始したとき、転職するか、起業するかを悩んだほど、Bさんは独立志向が強い人でした。前職では「顧客の業績拡大にマーケティングで後方支援したい」と新規開拓で実績を残しマネジャーとして活躍してきましたが、より経営に近いビジネスでスキルを磨きたいと転職を決意。自身が経営に強い興味を持っているだけに、独学で学んだ経営戦略や管理会計の知識も生かして、フランチャイズの加盟店開拓の仕事で、オーナーからの信頼も厚く、好業績を生み続けています。自分の興味や志向に近い仕事を選んだことが最大の成功要因かもしれません。
【失敗事例(1)】
大手メーカーの人事 →アパレルEC(電子商取引)の人事へ(41歳・男性・Cさん)
大手メーカーで人事課長として活躍してきたKさん。40歳を迎え、成長業界で自分の経験を生かしたいと、アパレルECサイトを運営するベンチャー企業に転職しました。転職先は人材の層が薄い組織だったので、Cさんの経験・スキルは歓迎されました。しかし、入社してみると、組織体制や風土の違いから、会社の意思決定や仕事の進め方に戸惑うことばかりだったそうです。外部の専門家にアウトソーシングしたくても予算が確保できず、残業の連続に疲弊。若いメンバーの育成にも苦労し、結局、2年もたたずに再び転職を考えることになりました。「現場がどんな働き方をしているのか、入社前にもっとしっかり調べるべきだった」と後悔していました。
【失敗事例(2)】
アパレルの販売・接客→ 美容製品の専門商社の購買へ(37歳・女性・Dさん)
自分の趣味でもある美容機器などを扱う仕事がしたいと、美容系の専門商社に、未経験の購買の仕事で転職。しかし、入社後すぐに「職場の人間関係や風土が合わない」と実感。設立50年以上の古い会社で年功序列や男性優位のカルチャーが根強く、前職では当たり前であった「風通しのよさ」がまったくなかったそうです。前回は「給与」や「仕事内容」を重視して転職しましたが、失敗して初めて自分にとって働きやすい環境とは何かを考えるようになり、現在は「社風」と言う観点を重視しながら再び転職活動をしています。
いかに企業に受け入れられるか、その突破法は確かに大事なのですが、長く機嫌よく働き続けるためには、自分が大切にしたい価値観や風土との相性もしっかり見極める必要があります。ぜひ、これらの観点を参考に、満足度の高いキャリア選択をしていただければと思います。
※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。
