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「転職4~5回以上」には厳しい視線も

年齢(=社会人年数)にもよりますが、ミドルやシニアで転職慣れしている人の中には、転職4~5回以上というのも珍しくなくなってきました。それがゆえに、転職4~5回以上の人は、ときに安易に転職を選んでいるようにも見受けられます。

3回目までと比べると、心理的なハードルはかなり低くなっているようです。転職活動の段取りも勝手知ったる感じかもしれません。直接応募かエージェント経由か、それぞれあれど、案件に次から次へと応募していく人も少なくありません。

前回までは一定の社数に応募すれば、いくつかは面接に進み、その中で内定も出た。ところが、今回は応募すれどもすれども、書類選考を通過しない。ようやく1次面接に進めば、採用側の面接官は渋い表情。数日後には「この度は貴意に添いかねる結果となり」という通知を受ける羽目に。なぜ、こうなるのか。3回目までとは、どこが違うのでしょう。

ミドルやシニアで転職4~5回以上の場合は、まずスタートラインの時点で、自分が思っている以上に厳しい目で見られていることを認識しておきましょう。ここは大きな違いです。

「なぜそんなにも転職を繰り返すことになったのか?」という疑問のまなざしが向けられるのは、避けがたい現実です。行く先々で事業閉鎖や撤退、倒産に直面し、会社都合で退職に追い込まれ続けている人は確かにいます。「自分は長く働きたいと思っていたのですが」と、無念の言葉を聞くこともしばしば。しかし、必ずしもすべてのケースが会社都合ではありません。

1度や2度ならいざ知らず、4回、5回、あるいはそれ以上に勤め先を変えた理由が会社都合というのは、見方によっては「企業を見る目がない」ということの証明ともなってしまいます。経営者の感覚では、何やら不吉なものも感じられます。「この人を迎えたら、うちまで経営が厳しくなるのでは」。こんな不安を覚えることもあるようです。

転職回数もさることながら、回数以上に重要なのは、各勤め先での在籍期間です。ここ最近、2~3年ごとに転職しているとすれば、企業は「結局、うちに来ても2~3年で辞めてしまうだろう」と思います。「いえ、次は長く働きたいのです」。本人の言葉や気持ちに現時点で偽りはないのかもしれません。しかし、冷たい言い方になってしまいますが、その言葉を信じるお人好しの経営者や採用責任者はいないと思ったほうがよいでしょう。転職歴の積み重ねは、それほどに説得力を持つのです。

「数年ごとに転職して何が悪いんだ。自分のキャリアのために働いているのだし、意に沿わない会社や、だめだと思った社長や上司の下で働き続けるつもりはない」――。その価値観を他人がとやかく言えるものではありません。

ただ、雇用する側の企業、経営者がそういった考えに共鳴するかどうかは別の話です。「分かってもらわなくても結構」。そう割り切る手もあります。もし、そうであるなら、採用側の判断で決まる転職よりも、独立を選択すべきかもしれません。今では業務委託のような形態も広がり、独立性を保った働き方を以前より選びやすくなっています。

それでも、次こそは長く、というならば、企業・組織に所属するということについての考え方を、この機会にしっかり見つめ直してから転職活動に臨む必要があります。ぜひ、この連載の過去記事「今の仕事やりきった?転職前に3ポイントを最終確認」なども参考にして、現職での状況をとらえ直してもらえればと思います。

一生のうちで1度以上の転職をすることは当たり前の時代となりました。良い転職はキャリアを切りひらきますが、不幸な転職は自らの行く末を悪化させかねません。転職回数ごとに異なる、採用側からの扱いを意識したうえで、キャリアをしっかり棚卸しして、新たな転職活動に臨みましょう。そうすれば、次が何度目の転職であったとしても、今後の展望を明るいものとする転職を実現できるはずです。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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