「韓国のイーロン・マスク」贅沢捨てなぜ日本で起業家

「韓国のイーロン・マスク」と呼ばれるソンさん
スマートフォンを活用して聴覚機能をサポートするワイヤレスイヤホンを開発・販売するオリーブユニオン(東京・目黒)。2020年の米デジタル技術見本市「CES」ではイノベーションアワードを受賞した。同社代表取締役は「韓国のイーロン・マスク」と呼ばれるソン・オーウェンさん(34)。韓国で生まれ育ち、米国で学んだ起業家はなぜ日本に本拠地を移したのか。
御曹司のような生活スタイルに疑問
「韓国では『CEO(最高経営責任者)病』にかかっていた。高級な服で身を包み、外国車を乗り回し、豪華な家で暮らした。しかし、これでは駄目だと思い直したのが日本に来るきっかけの一つになった」。ソンさんはこう語る。
動画配信サービス「ネットフリックス」などでヒットを連発している韓国ドラマ。「財閥の御曹司」を主役や脇役にしたドラマが少なくない。16年にソウルで起業して3年間は御曹司さながらの贅沢(ぜいたく)な生活をしていたと笑う。
韓国では社会貢献型のソーシャルベンチャーがもてはやされていた。その代表格としてソンさんが率いるオリーブユニオンが政府から注目され、メディアにも取り上げられた。米テスラのイーロン・マスク氏並みの甘いマスク、父親は韓国ビール大手の社長を務めていた。「私は財閥の御曹司ではない。ただ、韓国にいるとトップはいい格好をしないといけないというプレッシャーはあった。しかし、実態は社員10~15人のベンチャー企業の経営者にすぎなかった。もっと謙虚にコツコツ努力しないとダメだ」と自省した。
韓国は一族の関係が濃厚な「ファミリー社会」と言われる。実際にソンさんにはファミリーの後ろ盾があった。しかし、「自由にやりたい。ゼロから自分の力を試したい」と思ったソンさんは本拠地を海外に移すことを決意した。
最終的に日本を選んだのは、CESに製品を出展したときに日本企業から高い評価を得たからだ。「これは『スマート補聴器』としてヒットするのではと、我々のブーズを訪ねてきた約8割はソニーなどの日本企業だった」という。主要株主で障害者の就労支援を手掛けるLITALICO(リタリコ)の長谷川敦弥社長からも熱心に日本移転を勧められた。