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国公立大医学部であっても経済的な壁が高い

国公立大医学部合格者数ランキングを見てもう一つ顕著なのは、東大合格者数ランキング以上に私立校優位であることだ。経済的な理由が大きい。

国公立大学の医学部であれば年間の学費自体は一般的な国公立大学と変わらないものの、医学部卒業までには6年かかるので一般的な学部に比べるとトータルの学費は1.5倍必要となる。私大医学部も併願し、仮にそちらに進学するとなると、卒業までの6年間で2000万~4000万円の学費がかかるといわれている。医学部を目指すこと自体、高所得者層でないとなかなか手が出せない選択だ。

国公立大医学部に絞るにしても、絞るからこそできるだけ難易度の低い大学を選ぶモチベーションが働きやすくなる。すると必然的に地方の大学も視野に入れることになるが、その場合、学費自体は変わらなくても一人暮らしの費用がかさむ。

よって、もともと経済的余裕がある家庭に育った生徒が多い私立校が、国公立大医学部ランキング上位を寡占してしまう。お金持ちでないと医師になりにくい社会であることが、このランキングを見ても明らかなのだ。これは前々回の記事で述べた東大合格者数ランキングに私立中高一貫校が多い理由とはちょっと意味合いが違う。

大学通信調べ。◎印は私立、無印は公立を示す。合格者数は各高校への調査などから集計した。校名は現在の名称

大学通信調べ。◎印は私立、無印は公立を示す。合格者数は各高校への調査などから集計した。校名は現在の名称

この手のランキングが表すのは、実は純粋な学校の進学指導力ではない。むしろさまざまな社会構造の結果なのだ。くれぐれも、個別の学校のランキングが上がった下がったというような表面的なとらえ方をしないでほしい。

(1)東大合格ランキング 男子中高一貫校が上位占める理由

(2)京大合格ランキング 関西の公立校、なぜ躍進

(4)東大+京大+国公立医学部 合格者数ランキング1位は

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