経歴書のPR欄 大手は協調性、スタートアップなら共感
スカウトされる職務経歴書(下)

職務経歴書は面接の重要な手掛かりに使われる(写真はイメージ) =PIXTA
職務経歴書に書く自己PRは、「業種や職種が同じであれば、どの会社でも一緒で問題ない」と思っていないだろうか。実は、社風や組織体制が確立している大手企業と、短期間での成長を目指すスタートアップでは求める人材が異なるので、経歴書でもPRするポイントを変えたほうがスカウトされやすくなる。「スカウトされる職務経歴書」連載第3回は、応募する企業の成長フェーズによって意識すべき書き方を専門家に聞いた。
大手企業は協調性が見えないと「見送り」に
パソナ 人材紹介事業本部 コンサルティング統括部 宮永由佳さん
――大手企業に応募する職務経歴書で、最も重要なポイントは。
「大手は何でもこなせるゼネラリストより、専門性が高い人を求める傾向にあります。そのため、職務要約や生かせる経験、資格一覧に、『マネジメント』『研修企画・運用』といった核となる強みを明記できていることがポイントです。転職サイトに掲載されているツールや資料を使いながら、今まで経験してきたキャリアの棚下ろしに取り組んでください。そのうえで『御社なら経験がどのように生かせるか』を分かりやすく伝えましょう」
「大手は組織体制が成熟し社風もはっきりしているので、これまでの仕事の進め方や自分のポリシーに固執していると敬遠されてしまいます。40代など経験が豊富な人の場合は注意してください。『御社に合わせて柔軟に働けます』というアピールが職務経歴書でも求められます」

宮永由佳さん パソナ 人材紹介事業本部 コンサルティング統括部。入社後から一貫して、業界横断で管理部門全般のキャリアアドバイザーとして従事。主に年収700万円以上のエグゼクティブ転職を担当し、スカウト専任チームにも所属している。
――中小企業やスタートアップ企業に勤めている場合、自己PRで強調すべき点は。
「現職が中小やスタートアップの場合はとくに『柔軟性』を示すことが大切です。会社の規模が変わっても、周囲の力を借りながら柔軟に仕事を進めていけるのかがポイントです。大手は組織マネジメントがしっかりしており、関わる人も多くいます。中小では自分でどんどん動かなければなりませんが、大手では『何でも1人でできます』というアピールではなく、協調性をもって組織になじみながら働けることが採用の基準となります。周囲との調和を大事にし、多くの部署を巻き込んで調整していく力があることを自己PRに入れましょう」
「大手の採用見送り理由として多いのが、『スピード感があって魅力的だが、協調性がみえない』というものです。人柄を職務経歴書で見せるのは難しいことですが、自己PRを工夫することで可能です。たとえばコミュニケーション力の高さをアピールするには、関わってきた対象が誰なのかを明示するとよいでしょう。年齢を問わず、幅広く社内の人とやりとりをしていたのか、社外の人も含めた同じプロジェクト内のコミュニケーションなのかで、イメージする人物像が変わります」
――転職サイトを効果的に使うには。
「『ワークライフバランスを重視したい』『海外駐在をしたい』など、働き方の志向や希望条件は、職務経歴書に書くと、こだわりの強さがみえて逆効果になりますが、転職サイトには登録してください。希望年収は最低希望の金額から本音の額まで入れましょう。転職希望の時期も、大手企業を志望する場合には、転職活動の進め方のスピードに影響するので、入力してほしいです。サイトには情報をあまり登録していなくても、いざ面談をしてみると、詳細にイメージが固まっている人もいます。ぜひ最初からすべて入力する気持ちで取り組んでください」