経歴書のPR欄 大手は協調性、スタートアップなら共感
スカウトされる職務経歴書(下)
スタートアップでは「ビジョンへの共感」が大切
フォースタートアップス GM/シニアヒューマンキャピタリスト 林佳奈さん
――スタートアップ企業の職務経歴書で必ずアピールすべき点は。
「『自分は何ができる人物なのか』、つまり自分の看板と言えるものを端的に表すことです。どういう分野で活躍し、力を発揮できるのかを読み手が想像しやすいことが大切です。『営業もマネジメントも採用も経験してきました』ではなく『強みは営業です』と言い切ること。採用する側は何百という職務経歴書を比較するので、自分の看板を明確にして勝負してください。ただ、スタートアップでは職種の垣根なく仕事をする局面もあるので、『自分は営業が一番強いです』としたうえで、『プレーイングしながらマネジメント経験もあり、採用業務のことも理解しています』というアピール方法がよいでしょう」
「キャリアについて『法人営業』『商品開発』といった用語だけを列挙してあるものは、あまり意味がありません。PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルとともに、どのような課題を解決してきたのか、どう考えて行動し、その結果がどのように変わったのかを分かるように書いてください」

林佳奈さん フォースタートアップス GM/シニアヒューマンキャピタリスト。立教大学卒。2017年にライブ配信を手がけるSHOWROOM(東京・渋谷)に新卒第1号の社員として入社。その後、フォースタートアップスへ参画。採用コンサルティング事業の推進責任を担っている。
――読み手に伝わる職務経歴書に仕上げるコツは。
「構成が大切です。時系列にずらずらと書くのではなく、まず『自分が何をできる人間なのか』を示す、キャリアの要約を端的に書きましょう。その次に、どのような環境で、どう成果を出してきたのか、詳細を掘り下げて書いてください」
「言葉の使い方も細かいところまで気を付けてください。現職の社名についても、社外の人は知らないだろうと考えて、主な事業内容や市場での立ち位置から説明したほうがよいでしょう。職務経歴書は第三者が読むものです。自分が考える以上に、前提となる情報から書かなければなりません」
――スタートアップ企業への転職を目指す際に注意すべき点は。
「転職理由が『自己成長』だけでは物足りません。スタートアップは、社会のなかで課題意識を抱え、それを自分の仕事で解決し、社会貢献をしたいと思っている人の集団です。『解決したい社会課題がある』『顧客のこういう課題を解決して価値を提供したい』といった自分の考えを明確にし、志望企業のビジョンへの共感を見せることが大切です」
「職務経歴書でビジョンへの共感を示すにあたり、『御社が掲げるビジョンに100%共感しています』という必要はありません。どのような社会課題に関心を持っているのか、解決したいのかを示してください。それが、志望企業が目指す方向性と合致しているとよいでしょう」
「経歴書ではこれまでの仕事ぶりに加え、転職理由や自己PRも細かく確認されます。これから何をしていきたいか、今後のビジョンや思いも書いてください。自己PRは文字数を気にせず書いてほしいです。優秀な経歴を持つ人でも、ビジョンに共感していない場合は、前向きな採否結果にはなりにくいでしょう」
――大手企業からスタートアップへ転職を目指す際に留意する点は。
「チャレンジ精神や柔軟性が必要です。スタートアップでは大手とは異なり、職務に関係なく、皆で協力して業務にあたることがあります。営業職であっても、その先につながるマーケティングや、会社の成長を担う人材採用について考える場面があるかもしれません。常に変化する事業環境のなかで、柔軟に働ける姿勢を見せましょう」
「すべてのスタートアップに共通するのは『成長している最中』であることです。その点について恐怖心が強い人はあまり向きません。もちろんリスクが伴う環境ですが、それ以上に自分も挑戦したいと考え、不確実な未来に向けてワクワクした気持ちを持てる人が向いています」
(日経転職版・編集部 木村茉莉子)
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