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赤の他人 意見相違は当然

ダイバーシティーを受け入れる上で、もう一つ大事なマインドセットがあります。「全く別個の人間なのだから、意見は合わなくて当然」という大前提を心の中に置いておくことです。一番近しいはずの家族でさえ、意見が合わないことってしょっちゅうあるでしょう。ましてや赤の他人であれば、合わない方が普通なのです。せっかく多様なメンバーでチームを作っているのですから、無理に分かり合おうなんて思わない方がいい。そもそも無理して1つの解を出す必要もないですし、仮に1つの結論を出したからといって、メンバー全員が同じ価値観になる必要もないのです。

分散投資の理論でも全く違った動きをするAとBという資産の両方を抱えていることに意味があるのです。AとBが同じ動きをするなら、そもそも投資対象を分散していることにはなりませんから。

マネックスグループは7月末、ダイバーシティー(Diversity)にエクイティ(Equity、公平性)とインクルージョン(Inclusion、包摂)を加えた「DEI」を推進していくと決意表明しました。DEIは創造性の原点だと考えています。

つい先日は「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」についての勉強会も開きました。この分野は専門家があまりいませんし、レクチャーを受け身で聞くよりも、自分たち自身で情報を集めて学んだ方がいいと思います。このときは20代の社員が1週間くらいかけてあれこれ調べた内容を全員にシェアしてくれました。

アンコンシャス・バイアスって本当にいろいろあるんですよね。人種についての偏見もあれば、「雑用は女性や若手社員の仕事」「最近の若者は覇気がない」「子育て中の女性には管理職は無理」など例を挙げればキリがありません。こうして改めて言葉にすると実にひどい偏見なのですが、普段の何気ない会話や採用、人事評価にも影響を及ぼしているというのですから厄介です。でも、差別的発言をする人も実は悪意はなく、歴史的な経緯や言葉の意味などをよく知らないだけというケースも多々あります。これは自分の頭の中の認知のゆがみなので、自分の頭で考えて修正するのが一番有効です。私自身も周りの人と一緒に積極的に学んでいこうと思っています。

松本大
1963年埼玉県生まれ。87年東大法卒、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経てゴールドマン・サックス証券でゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス設立。2004年マネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)社長、13年6月から会長兼社長。08年から13年まで東京証券取引所の社外取締役、現在は米マスターカードの社外取締役を務める。

(ライター 石臥薫子)

(6)「人生つまずかないよう」が一番危険 間違えは早めに

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