野村総研が推す哲学書 生きる意味・会社選び問い直す

野村総研の経営戦略コンサルティング部門で採用を担当する八木創さん(右)と漆谷真帆さん
1965年、日本初の民間シンクタンクとして創業した野村総合研究所(NRI)。現在は、経営戦略コンサルティング部門と、ITソリューション部門を有する国内最大手のコンサルティングファームで、難関大学の学生の間では抜群の人気を誇る。
経営戦略コンサルティング部門の採用を担当する八木創さんは、就活生や内定者からどんな本を読めばいいか尋ねられることも多い。同社では特に推薦図書のリストは作っていないが、八木さんが最近、個人的によく薦めているのは『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』だ。
「2020年3月に出た直後に読んで、久々にすごい本と出合ったなと興奮しました。『贈与』というキーワードで世界の成り立ちを読み解いているのですが、自分がコンサルタントとして仕事をする中で何にやりがいを感じていたのかを見事に言語化してくれていました。哲学書の部類に入りますが、かっちりとした学術書とは違ってとっつきやすく、学生さんが会社を選ぶ『軸』を考える上でも参考になるのではと思い、薦めています」
同書は1985年生まれの教育者・哲学研究者、近内悠太氏のデビュー作。コロナ禍で私たちの価値観が大きく揺らぐ中、ニューノーマルを生き抜くための哲学書として高い評価を得た。
著:近内悠太

資本主義は、すべての物を商品化し金銭と交換可能なものとして扱うため、お金で買うことができない「贈与」が認識されることは少ない。けれどもこの「贈与」こそが、この世界を回すキーポイントであり、人々に「仕事のやりがい」や「生きる意味」をもたらしてくれるのではないかと問いかけ、贈与を中心とする倫理を説く。第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。
贈与のパスつなぐ使命感が「生きる意味」
同書では、お金で買うことができないもの、およびその移動を「贈与」と定義。著者は、贈与とは、送り手が見返りを求めずにそっと差し出し、いつか誰かに受け取られ「これは贈与だったんだ」と気づいてもらうことで初めて成立するのだという。さらにこんな主張が続く。