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一方、「どこで開業するか」という場所選びと、開設したホームページは、自身の市場価値を冷静に見極めて工夫した。「東京で税理士事務所を開業する、というと思い浮かぶのは千代田区や港区。そんなエリアにはすでに多くのエリート税理士がひしめいており、自分が太刀打ちできる市場ではない。足立区を調べてみると、税理士の数がとても少なく、『足立区 女性税理士』でネット検索するとさらに少なかった」。顧客として思い描いていた中小企業や商店も多かったことから、足立区で開業することを決めた。

開業後に開設したホームページには、「足立区の気さくな女性税理士」という大胆なキャッチコピーを打ち、笑顔の写真と、少しふざけたポーズの写真をちりばめた。「税理士に対して、怖い、敷居が高いというイメージを持っている人でも、気軽に連絡しやすい雰囲気」を前面に打ち出したところ、開業直後にもかかわらず依頼が順調に集まった。ホームページを見て問い合わせをくれるのは、「ノリが良くてコミュニケーション力のある人」が多く、ターゲットとしていた中小企業や個人の顧客と出会える格好の窓口になった。

顧客とのやり取りでも、話しやすい雰囲気を意識し、こまめに連絡するなど、丁寧な対応を心がける。「自分は決してデキる人ではなく、デキる人キャラでもないが、コミュニケーション力は高いほうだ」と自身を客観的に分析して打ち出した「気さくな税理士」というセルフブランディングは、経験の少ない駆け出しの税理士であった田村さんが仕事で自信を持つための大きな強みとなった。

「性悪説」に立ち、自分も相手も信用しない

仕事上で、「間違い」や「遅れ」があってはならないのは常識だ。それが起こらないよう多くの社会人は努力している…にもかかわらず、間違いや遅れは日々起こってしまうもの。「悪気がなくても、人は間違えてしまうし、締め切りをなかなか守れない」という前提で仕事を進めるというのが、田村さんの「性悪説」に立つという姿勢だ。

「提出してほしい書類の期限は、早めの日程を顧客に伝える。メールだけで伝わりづらいことは、電話もして説明し、認識のズレがないようにする。アポの前日には『明日、〇時にお伺いします』とリマインドメールを送る」といった具合に、相手側の思い違いや対応の遅れをあらかじめ防止する策を怠らない。

一方で、「自分のことも信用しない」という田村さんは、取引先などに送る書類全般はしつこいくらいに何度も読み返し、漏れやミスがないかをチェック。メールは文面だけでなくメールアドレス、会社名と部署名、名前、添付ファイルを指さし確認、という基本を徹底する。

「約束の時間や締め切り日を相手や自分が勘違いしていて、面会できなかったり、業務が遅れたり…といったことはよく起こりますが、確認メールを1通送るだけで防げます。また、『〇〇様』と書かれた自分の名前が1字間違っていて『この程度に思われているのか』とモヤッとすることもありますよね。相手も自分も『必ずミスをするもの』と思って仕事をすることで、自分が信用を失うリスクを回避でき、業務がムダに遅れることも防げます」

社会人としての信用は、こうした小さなやり取りの積み重ねで構築されるもの。「性悪説」に立って仕事を進めることは、誰でも意識さえすればすぐにできる、ミスを防ぐための有効な習慣だ。

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