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「半年天国・半年地獄」からの脱却を目指す

時代の社会的な事象を濃密に取り込んだ「人生ゲーム」の手法は、タカラの創業者で「おもちゃの王様」と呼ばれた佐藤安太氏の「ロングセラーづくりのDNA」を反映している。佐藤氏は55年にビニール製品の製造で創業。60年に作ったビニール製人形「ダッコちゃん」が爆発的ブームとなったが、すぐにブームが収束して痛い目も見た。ロングセラー商品づくりとブランド力を高めることの重要性を痛感したとされる。

佐藤氏の著作「凡才、一〇〇〇億を目指す」(中経出版)によると、当時のおもちゃ業界には「半年天国、半年地獄」という言葉があったという。子供の人口がまだ多かった時代とあって、おもちゃは売れれば急激にヒットするが、半年もすれば飽きられてメーカーは設備投資が無駄になるといった困難もあった。

平成版7作目の「人生ゲーム平成版VII」

平成版7作目の「人生ゲーム平成版VII」

そんな商品づくりや経営からどのように離れ、ロングセラーを次々と生み出せる組織を作るかが、経営者としての佐藤氏のテーマだった。売れた商品だけでなく、失敗した商品についても「いつ、誰が、どのような方法でアイデアを出し、それを誰が承認し、試作し、発売したか」などの経緯を丁寧にトレース。「何がヒット商品の条件となったのか」を常に徹底的に探っていたという。

めまぐるしく移り変わる社会と、気まぐれな消費者をつかまえ、商品に反映すること。その創業者の夢を「形」にしてきた商品が「人生ゲーム」だった。世の中の変化を受け止めやすい仕掛けだったことは、おもちゃの大敵といえる陳腐化を免れるうえで助けになった。高度成長期に生まれ、バブル景気や「失われた30年」もくぐり抜けた53歳の「人生ゲーム」にまだ「定年」は見えない。

(ライター 三河主門)

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