360度評価で自分の強み客観視 新たな可能性の発見も
KPMGコンサルティング 油布顕史プリンシパル

360度評価を採用する企業が増えている(イラストはイメージ=PIXTA)
人事評価で多面評価(360度フィードバック)を採用する企業が増えています。こうした評価手法を自己変革にどう生かしていけばいいでしょうか。KPMGコンサルティングで組織・人事分野を手がける油布顕史プリンシパルがアドバイスします。
(1)多面評価は効果があるのか?
多面評価は上司や部下、同僚、顧客といった立場の違う複数の人材を評価者として関与させる人事評価手法です。評価を受ける人(被評価者)が現場で執務上発揮している能力や行動などの評価材料をより多く集めることができ、評価の公平性や客観性が増します。人材開発や従業員のモチベーション(やる気)向上に生かす目的で採用する場合もあります。
とりわけ管理職は上司もライン管理職で多忙のため、部下がどう行動しているかが見えていないことが多く、評価の精度はあまり高いとは言えないのが実情です。そのため管理職層を対象とした多面評価は比較的有効に機能すると考えられます。
しかし、多面評価の効果に疑問を抱いている方も少なくないと思います。多面評価の問題点として、複数の評価者によって複眼的に評価を行っても、評価する側の経験のなさや不慣れさなどで、評価を受ける側の行動・資質について、漠然と評価されたり、評価する側にとって都合の良い人材が高評価を得るといった「人気投票」になってしまうことが挙げられます。
(2)多面評価の効果が上がりにくい理由
多面評価は主に管理職や専門職の育成目的で活用されていますが、期待したほどの成果を挙げられない企業も多いようです。その理由は主に以下の2つです。
・評価される側の成長につながらない(何を、どう改善すればよいのか具体的なアドバイスが得られない)
これらには、以下のような原因があると考えられます。
・評価領域・項目が多く、評価者の作業負担が大きい
・評価期間が短く、評価する側が評価される側の全ての言動について観察・記録していないため、正確に評価できない(その結果、評価者は強く印象に残る側面だけを評価してしまう)
このような問題を解消し、多面評価結果に説得力を持たせ、行動改善や成長につながりやすい方法を提言したいと思います。