変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

AIを活用した、様々な採用ツールが登場

AIを活用した採用ツールの一例を紹介しましょう。例えば、「動画面接」のプラットフォームを提供するZENKIGENの「harutaka(ハルタカ)」では、AI技術により動画面接での「応募者の印象」を定量的に可視化する機能を備えています。スタジアムのウェブ面接&録画面接システム「インタビューメーカー」でも、AI評価による採用DXを推進しているようです。

2017年にサービスが始まったタレントアンドアセスメントの「SHaiN(シャイン)」は、日本初の「AIによる面接代行」サービス。独自の戦略採用メソッドに基づき、AIが人間の代わりに採用面接を行い、候補者の資質を分析して診断結果データを提供しています。

応募者は「SHaiN」のアプリケーションをスマートフォンにダウンロードして面接を受けられるので、時間や場所の制約がなく受検機会の損失がありません。従来のように面接のために企業に出向く時間や交通費を削減でき、遠隔地からも応募しやすいというメリットがあります。

一方で、人事担当者は面接官のアサイン、面接場所や時間の確保が不要になり、加えて面接官の経験や勘による評価のばらつきが改善され、採用基準の統一が図れるというわけです。人事の主観ではなく、全ての応募者に公平公正な評価を行うAIの判断であれば、応募者も「(採用方針や企業風土に)合わなかった」という結果にも納得感を持てるのではないでしょうか。

「対話した内容」で資質を確認する手法であれば、学歴や性別、国籍に関係なく公平公正に評価してもらいやすくなります。これは、昨今、多くの企業が力を入れている「SDGs(持続可能な開発目標)」の目標10「人や国の不平等をなくそう」の実現にもつながると思います。

人事担当者はもっと本質的な業務に注力できる

私は、人事業務におけるテクノロジー活用がさらに進むことで、各自が自分らしさを発揮し、組織がより活性化していく未来を望んでいます。AIが代替できる業務はAIに任せ、それによって効率化が図れれば、人が介在すべき本質的な業務にもっと力を注げると思います。

採用であれば、選考の初期段階では「求める必須経験・スキルを備えているか」のチェックをAIで済ませられるでしょう。選考が進むにしたがって応募者との深い対話に時間をかけて「自社の根本理念や社風にマッチするか」の見極めを人が行うことで、双方の思いを伝え合うことができます。

既存社員に対しても、一対一の対話「1on1」などによるコーチングやキャリアカウンセリングなどに、今までより多くの時間を使えるようになるでしょう。将来のキャリアビジョンを描くとき、様々なルートの可能性が広がっています。AIは現状から「最適なルート」を示してくれるでしょうが、例えば「遠回りしながらも、本当にやりたい仕事・ポジションに近づいていく」といった道筋をイメージできるのは、やはり人です。

ある人事担当者が言っていました。「AIを活用して生まれた時間で、AIでは解決できない部分に対し、人事としての手腕を振るえる」と。望ましい使い方だと感じます。AI活用が広がることで、自分にフィットした仕事や職場に出会える人、将来のゴールの選択肢が豊かになる人が増える未来に期待を寄せています。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック