京大の開拓精神支えに環境の未来を開く レノバ木南氏
木南陽介・レノバ社長兼CEO(下)
マッキンゼー入社から1年半ほどたった頃、同僚と環境ビジネスの研究を始め、2000年5月30日、ごみゼロの日にリサイクルワン(2013年にレノバに商号変更)を立ち上げた。
当時のマッキンゼーは原理主義的な一風変わった人たちが多くて、それが面白かったですね。生鮮宅配のオイシックス・ラ・大地社長の高島宏平さんは同期で、今でもいろんな会合でよく顔を合わせます。そんなマッキンゼーの仲間内の中でもひときわ個性的だったのは、19年に亡くなった瀧本哲史さんです。しゃべり方も物事の考え方も独特で、何でも知っているので、何を聞いても「それはですねえ」と解説が始まる。ある程度話したところで「このくらいでどうですか」と聞かれるので、「はい、もう十分です」と。こちらの質問のレベルについて「その質問はどうかなあ」と首をかしげたりする面がある一方で、面倒見のいい方でした。毎晩遅くまで会社で仕事をしているとフラッと現れて「どうですか。最近の人生は」と話しかけてくれて、仕事以外の悩みについてもよく相談に乗ってくれました。
そういえば瀧本さんは生前、京都大学でも教壇に立たれていました。これも何かの縁かもしれません。その瀧本さんには、私自身が環境問題をテーマに事業を始めたいと相談した際、さまざまなアドバイスをもらい、出資もして頂きました。よく彼は「変えるには若者しかいない」といったことを言われてましたが、そういう視点でも応援してもらっていたのかもしれません。
創業当初は、環境・エネルギー分野での調査・コンサルティングを主軸に事業を展開していましたが、2011年の東日本大震災を機に、それまで少しずつ研究を進めていた再生可能エネルギーの分野に一気に踏み出す決断をしました。
2014年、レノバは第二電電(現KDDI)、イー・アクセス(現ソフトバンク)を創業し「通信業界の革命児」と呼ばれた千本倖生氏を社外取締役に迎えた。15年からは同社会長として経営をサポートする千本氏も京大OBだ。
千本さんにはある方のご紹介でお会いし、出会って15分で社外取締役への就任を快諾していただきました。実際にお話しして、ああ、やはり人生経験、事業経験の深さが全然違う、ぜひそのほんの一部でも学んで生かしたい、と思いました。同時に京大出身の方らしいなあとも感じました。常識にとらわれず誰もやったことのないことに挑戦することをよしとする「京大スピリット」とでもいうのでしょうか。当時、洋上風力発電は日本では市場にならない、無理と言われていたのですが、私がそれを何とかしてやりたいのだと話したところ、すぐに千本さんは反応して「絶対チャレンジすべきだ」と背中を押してくださったのです。
京大の学風の最大の特徴は、ある意味、自由な思考、新しい発想を「強要される」空気がある点です。自由に考えていないと「それはすなわち何も考えてないことと同じだ」と言われてしまう。人と違う考えを持つことを促されるし、自由に考えることが許され、推奨される。そして、頭の中で考えるだけでなく、現場に出るフィールドワークを重視する伝統があります。京大を表す言葉で私が一番好きなのは「探検大学」。何もないフロンティアを探検し、開拓していくことこそ価値があるという姿勢を端的に表しているからです。レノバも環境問題解決のフロンティアを開拓していきたいと思っています。
(ライター 石臥薫子)