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日本発の経営論が世界に広がらないワケ

本書は、日本発の経営モデルをテーマにしながら、日本企業の知の蓄積、そしてその発信力の乏しさを指摘しつつ、その根本に「文脈依存度」という言葉を借りて業界内、産業内という限られた空間で、コミュニケーションをとってきた日本企業の固有の文化があるとみています。

日本企業は、世界に先駆ける経営技術を数多く生み出してきた。一方で、経営実務の中から生まれた経営技術をコンセプト化し、サービスやシステムとしてパッケージにして海外を含む他社に売りこむという点では、アメリカをはじめとるする諸外国に遅れをとってきた。
すなわち、日本は経営技術のコンセプト化に負けてきたのだ。
そして、日本が経営技術のコンセプト化に負けてきた理由は、コンセプト化が持つ競争上の意義に気がついていなかったことと、抽象化・論理モデル化した議論への「組織としての慣れ」が十分でなかったことにあると述べた。コンセプト化に負けたということは、抽象化・論理モデル化に負けたということだったのである。
(第6章 コンセプト化とグローバル競争の先にある未来 224ページ)

自らの強みに気づかず、米国流の経営モデルに踊らされ、結果として成長を損ねている。「日本は、日本の経営技術を信じる力で負けているのである」(163ページ)=編集部注 傍点は省略。日本企業の復権のカギはまず、自信を取り戻すことにあるのかもしれません。

◆編集者のひとこと 日本経済新聞出版・平井修一

この本は、日経企業行動コンファレンスという研究会をきっかけにして生まれました。経営学者たちが集まる合宿形式の研究会で、50年の歴史を持ち、大学を越えた研究者たちの交流の場、若手研究者たちのデビューの場として続いてきました。出版社にとっては研究会をお手伝いしながら経営学・経営学者の動向を知り、新しい才能を見つけ、本の執筆につなげる貴重な機会でもあります。

出会った当時、著者の岩尾先生はすでに1冊目の本となる専門書を有斐閣から出すことが決まっており、本書は一般向けに出す2冊目の本となりました。「日本企業の経営はダメ」「いやスゴイ」の単純な議論ではなく、経営技術のグローバル競争の本質に挑んだ本であることがわかるように推薦文は、ものづくり研究の第一人者藤本隆宏先生と、『世界標準の経営理論』の著者入山章栄先生にお願いし、ご快諾いただきました。

自分が担当した本を「読んだ」「良かった」と連絡をもらうことがたまにありますが、本書は刊行直後から、日本人の経営コンサルタントとして草分け的存在の方、経営リーダー向けの新刊書紹介を長年続けられてきた方、そしてコンサルタント兼ビジネススクールの教授として活躍する大学時代の旧友の3人から、立て続けに連絡をいただきました。尊敬する方々から認められる本を出すことができ、編集者にとってうれしい限りです。

 一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。
  • 著者 : 岩尾 俊兵
  • 出版 : 日本経済新聞出版
  • 価格 : 1,980円(税込み)

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