変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

35歳はキャリア前半を振り返る適齢期

就職して10年以上を駆け抜け、管理職になったり、現場第一線のスペシャリストになったりする35歳前後の年齢は、キャリア前半を振り返るにはちょうどいいタイミングです。少しずつ日常に埋没しかけている自分を、もう一度冷静に振り返り、キャリアの後半戦をどう生きていくのかを考えるべき時期でもあります。

自分が仕事で得意としていること、好きなこと、周囲から褒められたこと、ガッツポーズをした瞬間など、仕事生活で充足したことや高揚したことを、まずはランダムでいいので思い出してみましょう。次に、それとは逆に、仕事上で落ち込んだことや失敗したことなどマイナスのエピソードも思い出してみてください。

一通り振り返ったところで、できれば、ノートを1枚破って、真ん中に横一線のゼロ地点の線を引き、就職してから現在までの自分自身のモチベーションの上がり下がりを曲線で書いてみてください。自分の仕事人生の最高のタイミングはどこなのか、それをもたらした出来事は何か。あるいは、それを反転させたエピソードとは、どのようなものなのか。

キャリアのモチベーショングラフを作ってみると、改めて自分の人生の上がり下がり、山と谷がはっきりと見えてきます。ただ、このグラフは作って眺めておしまいではありません。このグラフを自分で眺めながら、自分はどんなときに気持ちが高まるのか、どんなときに気持ちが落ち込んでいくのか、その傾向値を探ってみてほしいのです。

思考の癖を知り、自分を突き放して見る「客観化」を身につけることができれば、自分を本当の姿を知るための大きな武器になります。このグラフは、その手がかりとして重要です。

社会人として一通りの経験を積んでくると、それが逆に偏見や固定観念など、認知バイアスを生むこともあります。特に成功体験や失敗体験は「こうでなければいけない」とか「こうやると必ず失敗する」というように、ものの考え方を固定的にしてしまい、柔軟性を喪失していく原因となります。年齢を経ても柔軟な発想を持ち、優れた結果を残している人たちはみな、バイアスや固定概念を打ち消す努力をかなりしています。

社会人経験を通して培ってきた判断力には、正しい側面もある一方で、偏見になっていることもあるのではないか。自分の判断を疑い、柔軟性を維持することもぜひ忘れないでください。

最後に、35歳までの仕事経験を通じて、自分なりに考える理想の仕事を考えてみてください。縦横2軸のマトリックスで、左右の軸を「組織で成果を生む仕事に強みがあるのか、個人で成果をあげることが得意なのか」と置き、上下に「自分が強みを発揮できるのは運用的な仕事か、創造的な仕事か」を置いて4つの象限を作ります。

(1)創造的な仕事で組織成果を生み出す人

高い専門性と事業運営に関わるスキル・経験を持って、新たな経営課題・事業課題に対応、あるいはもうかる仕組みを生み出すタイプ

(2)個人の専門性を生かして組織成果を最大化する人 

高い専門スキル・ノウハウを活用して事業に必要な専門性を提供するタイプ

(3)運用のプロとして組織成果を生み出す人

既存の仕組みの中で、組織として業績を拡大したり、仕組みを持続させる実行者タイプ

(4)個人の技量で事業の基盤を支える人

既存の仕組みの中で、定型的業務を遂行し成果を上げていくタイプ

あなたはこの中で、どのゾーンの仕事を強みとしているでしょうか。また、この先はどのゾーンの仕事をしていきたいでしょうか。

単にこれまでやってきたことだけにしばられるのではなく、たとえば45歳までに自分がどうなっていきたいのかを考えて、そこから逆算してキャリア設計をしていく方法があります。ぜひこんな観点も参考に、35歳からのキャリアを見直してみていただければ幸いです。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

黒田真行
ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック