変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

終身雇用制が崩れた昨今、ビジネスパーソンにとって「転職」という選択肢を持つことが当たり前の時代になりました。しかし、「エグゼクティブ層」に関しては、日本は欧米に比べまだまだ「転職マーケット」が小規模。しかし、ここ数年でエグゼクティブの転職事例は着実に増えています。現状と今後の見通しをお伝えします。

5年でエグゼクティブの転職事例が3倍に

日本において、ひと昔前まで「中途採用」は一般的なものではなく、転職する人は特異な目で見られる傾向がありました。しかし、ここ20~30年で求人誌、求人サイトが続々と登場。終身雇用の崩壊に伴って、「転職」は当たり前の選択肢となり、中途採用マーケットは拡大してきました。

ところが、経営者、役員、上位管理職といった「エグゼクティブ層」に関しては、欧米諸国に比べ、日本の中途採用マーケットはごく限られています。弊社の調べでは、その規模は米国に比べると100分の1ほど。米国のCEO(最高経営責任者)クラスの転職は何十億円、何百億円という報酬が伴うため、金額では一概に比較できないのですが、それを加味しても、せめて10分の1になってもいいと思うのです。

つまり、現状の10倍です。ここ数年は、社長として複数企業を渡り歩く「プロ経営者」が注目されるようになっていますが、まだまだです。

とはいえ、経営幹部の流動化は着実に起きてきています。

リクルートグループにおいて幹部層に特化した転職エージェントサービスを手がける「リクルートエグゼクティブエージェント(以下、リクルートEX)」に、私が社長として就任したのは5年前。このとき、「日本にエグゼクティブの転職マーケットを築き上げる」という目標を掲げ、企業と転職希望者双方のニーズを掘り起こすこと、そして両者を正しくマッチングしていくというシンプルなモデルを実行してきました。

結果、リクルートEX内のデータでは、エグゼクティブクラスの転職決定数はここ5年で約3倍に増えています。マーケットが確実に成長しているのです。

ビジネス環境の激変が、幹部人材のニーズを生んでいる

エグゼクティブの転職マーケットが育ってきているということは、採用する企業側にそのニーズがあるということ。ニーズが生まれているのにはどんな背景があるかというと、第一に、「ビジネス環境の変化の加速」が挙げられます。

国内マーケットが伸び悩む中、新規事業や海外展開に打って出る企業が増加。国内においても、IT・ネットの進化によりビジネス手法もめまぐるしく変わっていきます。

新たな分野に進出、あるいは新たな手法を導入しようとしても、自社内にはそれを担える人材がいない。育てている時間もない。そこで社内変革をけん引してくれるリーダーを、外部から招きたいとする企業が増えているのです。

特に、海外展開にあたっては、その事業責任者として経験者の採用ニーズが高まっています。

もちろん、幹部層の中途採用に慎重な企業もまだまだ多い。「異分子が入ることで既存組織がうまく回らなくなるのでは」「外部の人を登用することで、既存社員が不満を抱くのでは」といった懸念を持っているためです。

しかし、中長期で会社の成長を見据えた場合、リスクをとってでも外部の人材を登用する必要があると感じている企業は増えています。

先日お話ししたある社長は「ぜひ迎え入れたい人物がいるが年収が高すぎる。それよりランクの低い社員を2人採用すれば、当面の業務は回るのでは」と迷っていました。しかし、その人物を採用した場合、組織がどう変わるかを一緒に考えた結果、「数百万円高い報酬を払ったとしても、数億円のリターンを得られる可能性がある」という結論に至り、その人物の採用を決定しました。

今後、中途採用されたエグゼクティブの活躍事例が増えるに伴い、保守的な企業の考えも変わっていくかもしれません。

アジアを中心に、グローバル人材の転職が活性化

転職者側に目を向けてみると、エグゼクティブの転職事例にはさまざまなパターンが見られます。

・専門性を生かし、経営企画やCFO(最高財務責任者)などとして異業界に転職
・外資系企業に勤務している人が日本企業に転職
・海外で働くことを志向し、海外拠点責任者などのポジションに転職
・大都市圏から地方に移住し、地場企業の経営幹部に就任

なかでも、数年前に比べて拡大しているのが「海外」、特にアジア圏のビジネスに関わる転職です。

リクルートEXでは、グローバル人材ニーズの高まりを見越し、3年前にある取り組みを開始しました。コンサルタント全員をアジアに出張させ、現地で活躍するエグゼクティブと会って話をする、というものです。

その活動を通じ、3年間でアジア駐在のエグゼクティブ1000人以上とのネットワークを築きました。それに伴い、転職事例も増えています。

彼らの転職の動機でよく見られるのは、次のような例です。

・アジア拠点の責任者として、大きな裁量権を持って経営を行ってきた。帰任が決まったが、日本のヘッドクオーターでは権限が限られ、自由さもなくなるのが不満
・家族を連れて駐在中。子どもはインターナショナルスクールに通っている。帰任を命じられたが、子どもをグローバルな人間に育てたいので、家族と一緒に残りたい

彼らがその国に残ること、あるいは他の国での海外勤務を希望し、現地の転職エージェントに相談したとしても、ローカル案件しか紹介を受けられず、給与は大幅ダウンします。そこで我々が日本から提供する「駐在」の求人案件が歓迎され、海をまたいだ転職サポート事例が増えているというわけです。

また、海外で活躍している方々の話を聞く中で、「現地でビジネスを推進するための課題」や「現地で活躍できる人材の要件」もつかむことができました。それを国内の企業にフィードバックすることで、国内企業はグローバル人材の採用の方針・目標を明確化できるようになります。それが、さらなるグローバル人材の採用・転職の活性化につながるのではないでしょうか。

 「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は5月13日の予定です。
 連載は3人が交代で担当します。
 *黒田真行 ミドル世代専門転職コンサルタント
 *森本千賀子 エグゼクティブ専門の転職エージェント
 *波戸内啓介 リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
波戸内啓介(はとうち・けいすけ)
株式会社リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長
1989年リクルート入社。営業部門、企画部門責任者を経て、リクルートHRマーケティング関西など、リクルートグループの代表取締役社長を歴任。2011年リクルートエグゼクティブエージェント代表取締役社長に就任。
 株式会社リクルートエグゼクティブエージェント(http://www.recruit-ex.co.jp/)

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