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 チャレンジ精神が旺盛な人材かどうか、どのように見分けますか。

南場智子DeNA会長

南場智子DeNA会長

「例えば企画会議をやっていて、上司の目を気にして優等生的なありきたりの答えを考えるような人では困ります。先回りして正解を答えるタイプはいりません。議論するだけ、時間が無駄です。自分の意見があり、芯を持っていて『おもねらない人』を求めています。30分、40分話して振り回すと、大体分かります。しかし、そこまでしても『裏をかく人』もいるので採用のミスというのはあります」

「わが社の場合は『おもねらない』がスローガンのようにいわれています。『あなた上司の意見におもねっていない』とか始終言い合う文化なんです。これがわが社の価値観みたいなものです。うちはドンドン新しいことをやっていて、チームのリーダーにプロジェクトを任せています」

「私が未熟な知見で『これ値段を半分にしない』といったら、『はい、仰せの通り』では困ります。イエスマンはうちには向いていません。私が『こうしてよ』と強めに言っても、『南場さん、それは違います』と。そして徹底的に議論して、結論を出していくそんな会社です」

 普通の会社の大半の社員はイエスマンではありませんか。

「ですから中途採用の社員は最初びっくりします。例えば、新卒採用で私がある学生を知っていてすごく優秀な人間だと判断します。しかし、採用チームは、『南場さんから紹介があったけど、落とします』と。私は採用リーダーを呼びつけて『私があの学生のどこを評価したのかなぜ聞いてこないのか』と、プロセスの点は叱ります。しかし、結果的には採用チームの判断をリスペクトします。採用チームのほうが私より情報も多いし、任せていますから」

 しかし、そんな人材は会社を飛び出したりしませんか。

「はい、外部で活躍できるぐらいの人材になってほしいと思います。私は囲い込みという言葉が嫌いなんです。もちろん優秀な人材はDeNAのために働いてほしいです。そのために新規事業を次々展開して、意欲的な舞台を提供し続けています」

 苦労して会社をつくって軌道に乗せたのだから、威張って君臨していたい。創業者はそんなもんじゃないですか。

「それってすごく格好悪いと思います。アイデアを思いつく、そして苦労して、試行錯誤してがんばるというプロセスがあって、目標を達成する、3つの段階があるとしたら、一番興奮するのは七転八倒するプロセスのところですね。そこがワクワクして面白いわけですよ。私は名誉が欲しいとか、上場してお金持ちになってうれしいとは思わない人種なんです」

 「上司におもねらず、徹底してチャレンジしていく」という企業文化は、マッキンゼーのコンサルタント時代に学んだことがベースですか。

「いいえ、マッキンゼー時代の経験はすべて消去しています」

 マッキンゼー時代は南場さん自身が「先回りして正解を答える」タイプだったのではありませんか。

「そうですね。上司のパートナーを神のように尊敬していたので。新入りのときは常に何を求められているのか考えて、発言したり、行動していました。パートナーは絶対的な存在でしたからね。もともとコンサルとうちの社員とは、要求されるモノは違います」

(代慶達也)

南場智子氏(なんば・ともこ)
1986年津田塾大卒業、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。90年米ハーバード大経営学修士(MBA)を取得、その後マッキンゼー・ジャパンの役員に就任。99年にDeNAを創業して社長就任。2011年、病気療養中の夫の看病に専念するために代表取締役社長兼CEOを退任。取締役を経て15年6月から取締役会長。新潟県出身

 2015年7月24日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成しました。

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