変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

――科学技術政策に関わってきた経験から、日本の研究力の世界的な地位が低下した原因は何だと思いますか?

「国際競争力が低下しているのは事実でしょう。しかしちまたで言われているほどひどい状況ではないと思います。国際的に日本への期待は高い。欧米の政策関係者からは『日本と一緒にやりたいが、国際競争力が低下しつつあることを心配している』と言われます。日本の研究力は今も十分高い水準にあるものの、何とかしないといけません」

日本の科学力復活に奮闘

「なぜ低下しているのか、いくつもの要因がありますが、根本的な原因はバブル経済が崩壊して以降、全体的な国家戦略が欠如していたことです。高度経済成長の時代が終わり、皆が努力すれば社会が良くなる時代が終わった段階で、科学技術も含め新たな戦略を描けませんでした」

総合科学技術・イノベーション会議では民間議員として科学政策の立案に携わった

総合科学技術・イノベーション会議では民間議員として科学政策の立案に携わった

「英国やドイツは一度地位が低下して、それを食い止めるためにもがき苦しんだ結果、今があると思います。基本的にはずっと成長している米国や急成長している中国と日本を比較しても仕方ありません。欧州では科学技術予算はそれほど増えていませんが、努力や工夫で地位を維持しています」

「日本の科学技術予算は増えてはいませんが、減ってもいません。工夫が足りなかったと思います。科学技術政策がその場のパッチワークで、最適化されていません」

――なぜ最適化されなかったのでしょうか?

「大学や研究者の多くは研究予算を増やせと文句ばかり言って、政府との対話が欠けていました。私は研究予算の増額を要求する前にやることがあるだろうと思っていました。最近は状況が変わって、大学側も自分たちで変わろうと努力して、やる気があります。政府も危機感を共有しています」

「2020年度に始まったJSTの創発的研究支援事業は、若い人の挑戦的な研究を7年間と長期にわたり応援する仕組みで、研究現場の評判も良いです。また、運用益で世界と渡り合うトップ大学を支援する、10兆円規模の大学ファンドもこれから本格始動します。このタイミングが、日本の研究力の再興に向けた最大で最後のチャンスだと思います」

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック