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保育園へのお迎え途中の事故も通勤災害に

自転車にお子さんを乗せて保育園に送迎する姿は、男女問わずよく見かける光景です。

自宅から最寄り駅までの短い距離の往復を自転車利用すること(途中に保育園の送迎を含め)について、会社に許可を受けている人は少ないでしょう。自宅から会社までの一般的な自転車通勤と違って、そこまで厳密に規制している会社はそれほど多くありません。

自転車通勤、保育園送迎で事故にあったらどう対処する?(写真はイメージ=PIXTA)

自転車通勤、保育園送迎で事故にあったらどう対処する?(写真はイメージ=PIXTA)

最寄り駅から自転車に乗って保育園に子どもを迎えに行く途中にケガをした場合が通勤災害として認められるかは、保育園へのお迎えに行くルートが「合理的な経路」に当たるかどうかがポイントになります。

通勤災害での「合理的な経路」とは、一般に従業員が用いると認められる経路のことで、必ずしも最短経路とは限りません。

行政解釈では、「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる」とされています。

つまり、共働き夫婦がそれぞれ保育園に子どもを迎えに行く場合は、合理的な経路として認められるということです。

配偶者が専業主婦(夫)の家庭で子どもを監護できる人がいる場合は、合理的な経路として認められない可能性が高いですが、病気療養中で監護できない状況など様々な事情があるかもしれません。共稼労働者とありますが、他に子どもを監護する者がいないという点はポイントと言えるでしょう。

ところで、毎日駅まで自転車で行く途中に保育園に立ち寄る従業員が、その日たまたま台風のため自動車で保育園まで送り、一旦家に戻るまでの間に車で事故にあったとしましょう。本来の通勤とは、上述のとおり「住居と就業の場所との間の往復」を指しますが、こうしたケースが通勤災害になる可能性がないとは言えません。

会社が認めていない通勤手段でも通勤災害の対象に

また、通勤における「合理的な方法」については、平常用いられる交通手段に限らず、一般的に用いられる交通手段であれば、自転車や自動車も認められます。泥酔した状態で運転する場合などは合理性を欠くので論外ですが、本来の用法に従ったものであれば、合理的な方法と言えます。

普段は自転車で駅まで行っているものの、雨の日はバスを利用するなど、日によって交通手段を変えている人もいるでしょう。経路については、乗車定期券に表示され、あるいは、会社に届け出ているような、鉄道、バス等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路などが合理的な経路となることはいうまでもありません。通勤災害については、必ずしも会社に申請している経路・方法に限定されているわけではありません。実際の労災認定は、様々な要素を総合的に勘案して個別具体的に、所轄の労働基準監督署で判断されます。

自宅から会社までの自転車通勤をこれから始めようか検討されている場合、まずは会社のルールを確認しましょう。定められた方法で自転車保険に加入するなどの対応と交通安全ルール・マナーを守ってご利用いただきたいと思います。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。グレース・パートナーズ株式会社代表。人事労務・社会保険面から経営を支援。多様で柔軟な働き方の雇用環境整備や女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。働き方やキャリア、社会保障などをテーマに多数執筆。

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