コニカミノルタ・山名昌衛会長 苦しくとも次へ種まき
コニカミノルタ 山名昌衛会長(上)
私のリーダー論――リーダーの資質として大事なのは何だと思いますか。
「人に関心があり、人間好きであること。そして先入観がなく社会に対して倫理観が深く、謙虚であることも大事です。これは利他の精神にも通じます」
35歳までに大役の経験を
――そう考えるようになったきっかけはありますか。
「これは小学4年生の時の経験がもとになっています。学年の中でも勉強が得意だった友達2人とある日、学校の廊下を歩いていました。廊下にごみが落ちていることに気づきましたが、話に夢中でそのまま通り過ぎました。するとその瞬間、背後で見ていた背の高い男の先生の雷が落ちました」
「その時の言葉が今でも忘れられません。『なぜ怒られているか分かるか。君たちは将来どんな形であれ人を引っ張っていく立場になるんだ。いくら勉強ができても、ごみを率先して拾うような人間にならないとだめだ』と言われたのです」
「今の時代、コンプライアンスや倫理観といった言葉がよく叫ばれています。言葉だけを聞くと難しいように感じます。でも私にとってはその時の経験がきっかけで、社会で人に何らかの影響を及ぼす人間にとって大切なことは、謙虚であり率先して行動することなんだと考えるようになったのです」

定期的に事業所を訪問し、若手社員も交えた対話集会を開いてきた(左端が山名氏)
――どのようにリーダーを育てればいいのでしょうか。
「リーダーとは基本的に育てるのではなく、育つものだと考えています。そのためには修羅場を経験することが重要で、会社はその場を提供する必要があります」
「私自身が若い時に海外で働き、鍛えられました。若手に海外市場の開拓という重任を任せるような寛容さと包容力が当時の経営者にあったからです。成果や結果だけを求めるとそのようなことはできません。海外派遣や副業の解禁、ジョブリターンなどを制度化し、できるだけ35歳までに大きな仕事の機会を提供すべきだと考えています」
「リーダーの近くで学ぶ機会を持つことも大事です。全体を見渡す力や決断力を学べるほか、時には反面教師にもできます。社長時代には政策秘書に若手を登用していました」