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理由はデジタル化が進んでいたからです。現地ではWFPが主体となり、個人情報を登録した難民登録カードを発行し、そこに毎月、定額の電子マネーを入金しています。ですから、誰もが簡単に難民キャンプ内で買い物ができます。顔写真と指紋、電子マネーがセットになっているので、他人のものは使えませんし、カードを落としたり盗まれたりすれば使用が即ストップするので不正もできません。

日本の行政で働く人たちは大量の仕事をこなし、真面目に頑張っていると思います。政府も今、マイナンバーカードの普及に努めています。しかし、現時点では一定金額を確実・公平に配布する能力はバングラデシュの難民キャンプの方が日本より上なのです。

これはほんの一例で、バングラデシュの方が日本よりはるかに進んでいたり、優れていたりする点は他にもたくさんあります。ただ、それに気づくかどうかは人によります。これがダイバーシティーの面白いところですが、自分と異質なものに対して最初からオープンマインドな人は、他者から学ぶべき点にすぐ気づけます。ですが、ダイバーシティーに飛び込んでみようと最初から思わない人には大事なことは何も見えないのです。そういう人はそもそもバングラデシュには行かないでしょうし、もし無理やり連れて行ったとしても、バングラデシュが日本より遅れている点だけを見て、「やっぱり日本の方が進んでいる」と思うだけでしょう。そんな人に対しては現地の人も大切なことを何も見せてくれません。

「日本が良くなる」、若者の9.6%

前回、年齢のダイバーシティーに関し、当社がCFO(チーフ・フューチャー・オフィサー、最高未来責任者)を10代の若者に任せていることを紹介した際にも同じような話をしました。「子どもたちは会社や社会のことをよく分かっていないので、大したアイデアは持っていない」と見くびり、「1つでも面白いアイデアが出てくれば、つまみ食いしよう」と思っている大人には、子どもたちは本気でいいアイデアを提案してくれはしないのです。

私がとても気がかりなのは、この国の若者が日本の未来を悲観し、「自分たちが社会を変えていける」という希望を抱けていないことです。日本財団が日本、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、英国、米国、ドイツの9カ国の若者各1000人を対象に19年に実施した調査によると、自分の国の将来が「良くなる」と答えた日本の若者は9.6%で、9カ国中最下位でした。また「自分で国や社会を変えられる」と思っている若者は日本以外のほとんどの国で5割を超えているのに対し、日本は僅か18%しかいませんでした。5人中1人。あまりにも悲しい数字です。

こうした状況を変えるにはジェンダー(性別)、年齢、地域のダイバーシティーに関する問題に本気で取り組み、楽しそうにイノベーションを起こしている姿を若者たちに見せる以外にありません。その思いを共有してくれる企業、ビジネスパーソンが少しでも増えることを願っています。

出雲充
1980年広島県生まれ。2002年東大農学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。05年ユーグレナを創業。同年、世界初となる微細藻類「ミドリムシ(学名・ユーグレナ)」の食用屋外大量栽培に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤンググローバルリーダー。第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。経団連審議員会副議長。

(ライター 石臥薫子)

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