変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

私はよく例えで言うのですが、プロ野球が年功序列でレギュラーを決めていたら、勝てるはずがありませんよね。スポーツの世界では実力主義が当たり前なのに、会社や官庁となると、いまだに「○年入社組」「○年入省組」などという言葉がまかり通っているのは本当におかしなことだと思います。私は座長代理として参加した政府の「選択する未来2.0」懇談会でも、官庁が率先して年功序列を打破していかないと駄目だとしつこく主張し、今年6月の最終報告でもその文言を死守しました。年功序列は端的に言って、年齢差別じゃないでしょうか。採用時に出身校を聞くのをやめようなんて話がありましたが、それよりも生まれた年を聞くのをやめるべきだと思います。

50年前の車に学ぶ「謙虚な姿勢」

これは余談ですが、1963年生まれの私は50歳になった時に、自分への誕生日プレゼントとして、子どもの頃からの憧れだった63年式のスポーツカーを買いました。これがもうめちゃくちゃ格好いいのです。デザイン的には世界最高。ポルシェやフェラーリも到底かないません。ところが「走る」「止まる」「曲がる」に関しては軽自動車にも勝てない。全く駄目です。ものすごく苦労しながら運転しています。

でもなぜ私はこの車を買ったのか。小さい頃からの憧れだったと言う理由の他に、実はもう一つ理由があるのです。それは自分への戒めです。人間50歳を超えると経験も人脈も増え、会社の中でも偉くなったりして、自分は若い時より能力が高くなっていると思いがちです。でも現実は全く逆で、63年式のスポーツカーよろしく、加速は悪けりゃ減速も悪いし、ブレーキは効かないし、曲がれないしで、相当ガタがきている。50年前の車なんてそんなものですよ。

だから、謙虚にならなきゃいけない。私は自宅の仕事机に置いているその車のミニチュアを見ながら、時々自分を戒めています。皆さんもぜひ、自分より若い人の意見にはしっかりと耳を傾けてください。彼らを潰さず、信じてどんどん任せましょう。50代になったら優秀な若者を応援する側に回るべきだと思います。

松本大
1963年埼玉県生まれ。87年東大法卒、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経てゴールドマン・サックス証券でゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス設立。2004年マネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)社長、13年6月から会長兼社長。08年から13年まで東京証券取引所の社外取締役、現在は米マスターカードの社外取締役を務める。

(ライター 石臥薫子)

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