大手監査法人初の女性トップ 変革へ、少数派を強みに
EY新日本監査法人 片倉正美理事長(上)
私のリーダー論ポジティブな姿勢を連鎖
「それは監査法人のトップだから高い監査スキルが必要という意味ではありません。リーダーに求められるのは皆をモチベートできる能力だという意味でした。それだったら私も対象にならないことはないな。そう思いました」
――理事長選挙はいかがでしたか。
「投票のために立候補者は投票権を持つパートナーの前で15分演説し、その後質疑応答に入ります。最初の演説時に感じたのは、場のしらーっとした空気です。『この人は何ができるんだろう』。そういう風に見られていたと思います」
「変化があったのは質疑です。監査法人の将来をどう考えるか、何をやるかを聞かれ、自分が抱いていた危機感とデジタル化の必要性を一生懸命答えました。しばらくすると、雰囲気が変わる瞬間があったことを覚えています。皆が聞く姿勢を示してくれ、『話が刺さり始めたな』と手応えがありました。質問が全て出尽くしたとき、質疑応答のめどだった2時間を優に超えていました」

EYジャパン元会長のハリデー氏(右)と片倉氏。毎早朝にカフェで話していた(2018年ごろ)
――リーダーとして「皆をポジティブにする」ために、どんなことを心がけていますか。
「まずは自分がポジティブでいることです。どんなに小さいことでも、うれしい、できた、ありがたいなど肯定的に考えるようにしています。就寝するときは『あ~幸せ』と言って寝ます。こうした心のあり方は積もり積もってポジティブな姿勢を育みます。自分が前向きになるだけでなく、周囲に連鎖し、それがつながると組織にポジティブな雰囲気が生まれます」
――前向きな気持ちを持つことが難しい時はどうしたらいいでしょうか。
「女性の集まりで話をするときなど『どうしたら自信が持てますか』などとよく聞かれます。能天気にポジティブでいられるわけではありません。言えるのは、準備するに限るということです」