朝の来ない夜はない 西武HD後藤社長が大事にする言葉
西武ホールディングス 後藤高志社長(上)
私のリーダー論「おとこ気」で大胆に決断
「当時の西武グループは有価証券報告書への虚偽記載などの問題を起こし、まさに真っ暗な状況でした。ですが、これから経営改革を進めるなかで間違いなく夜明けが来るんだ、と言い聞かせてきました。厳しいときこそ、リーダーたるものは言葉で組織を引っ張ることも重要です」
「コロナ禍でもグループ全社が非常に厳しい状況に陥りました。ですが、コロナ禍によって在宅勤務の普及など人々の行動様式が変化し、西武グループが開発してきた郊外都市が注目されるようになりました」
「24年秋には(西武鉄道の主要拠点である)埼玉・所沢駅前に約295億円を投じて、地上7階建ての大型商業施設を開業することを決めました。所沢は、従来の(帰って寝るだけの)ベッドタウンから、暮らす・働く・学ぶ・遊ぶの4要素がそろった『リビングタウン』に進化させていきます」

ホテルの売却など大型リストラを決めた一方、埼玉・所沢駅前に大型商業施設を開発する(10月、左が後藤氏)
――困難に直面すると逃げ出したい気持ちも生まれそうです。
「リーダーとして執念を持って取り組むことが大事です。一度やると決めたら執着心を持って徹底的にやり抜くこと。中途半端なところで投げ出すようでは、リーダーとしての信頼を得られません。最後に大切なのが"おとこ気"です。男性の専売特許ではありません。困難な状況に直面したとき、四の五の言わずにスパッと取りかかる勇気のことを意味します」
「尊敬する方がいます。国連難民高等弁務官として長く活躍された緒方貞子さんです。直接お会いしたことはありませんが、防弾チョッキを身にまとい、ヘリコプターで自ら交戦地域に乗り込んでいった姿を鮮明に覚えています。紛争の最前線で『enough(もう十分だ)』と訴えかけていました。アフリカの飢餓に苦しむ地域に出向いて貧困問題にもかかわっておられました。これがまさにおとこ気です」