変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

判断材料一つでも多く

――05年に西武鉄道社長に就き、何から始めましたか。

「西武の社員は非常に実直で真面目な人が多かった一方、おのおのが想像力を働かせて物事を決断することは不得手でした。多くのグループ会社があり、カリスマオーナーに社員が忠誠を誓うような経営体制だったからでしょうか。人的交流もほとんどなく、グループ各社の取締役が『やあやあ、はじめまして』と名刺交換していた姿には驚きました。トップダウン型組織の弊害が出た格好です」

「危機的状況にどう歯止めをかけるか。早朝から日付が変わるまで徹底的に情報を集めて質問し、議論を重ねました。スピード感を持って即断即決しなければ、どんどん情勢が変わってしまいます」

「金曜日の午後は鉄道の管区長や駅長、プリンスホテルの総支配人など色々な人に会いに行きました。事業所ごとの職場集会も開きました。リゾート地の調査も徹底的にやりました。入社後1年間はそんな日々の繰り返しです」

「私はよく『質問魔』だと言われます。21年には(マーケティング会社の)刀(大阪市)と組み、西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)をリニューアルしました。刀の森岡毅代表は『後藤さんの質問にいいかげんな回答をすると厳しい指摘を受けそうだ。緊張感があって非常にエキサイティングだった』と振り返っていました。先行きが不安定だからこそ、『判断材料がまだ足りない』と思うことが欠かせません」

(石崎開)

一勧の「若手改革派」


ごとう・たかし 1972年東大経卒、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。97年に発覚した総会屋利益供与事件後、経営陣の退陣を主張するなど若手改革派の中心を担った。2004年みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)副頭取。西武グループの再建に携わり、05年西武鉄道社長。06年から現職。73歳。
球団オーナーを務める埼玉西武ライオンズは21年、本拠地球場を改装した。「来年は松井稼頭央新監督を中心に日本一を目指す」と新リーダーに期待を寄せる。

お薦めの本


危機管理のノウハウ(佐々淳行著)
危機管理の第一人者として様々な局面で陣頭指揮をとった著者の知見を学べ、リーダーの資質や役割について得るところが大きい。先行き不透明、不安定な今、ますます輝きを増しています。
[日本経済新聞夕刊 2022年12月1日付]

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