ひとつ上から課題に迫る 筑波大学・永田恭介学長
筑波大学 永田恭介学長(上)
私のリーダー論「やらされている」に抵抗
――最近、大学や研究者を取材していると、とにかく元気がありません。日本の科学技術は「ATM」と逆にあるという気がします。
「恐らく多くの問題を抱え、閉塞感となっているのでしょう。研究や大学にとって一番いけないのは『やらされている感』です。それがもしあるならば、大学人はもっと抵抗しよう、と言いたい。『ATM』になれていないというならば、何か問題があるわけですから、それを認識するだけではなく、変えていかなければならないと思います」
――理想とするリーダー像はありますか。
「(経団連会長も務めた)土光敏夫さんです。1985年にあった国際科学技術博覧会(つくば万博)の代表をされていたことを知り、語録や自伝を読みました。当時、これからはインターナショナルな時代だと当然のように言っています」
「我々は日本的であって、一方でインターナショナル、グローバルな感覚を持つことが必須であると説いています。実務の人として知られていますが、実は相当のイマジネーションの持ち主だったと思います」
「わかっていても実行しないのはわかっていないのと同じだ、と部下を叱り飛ばしていたそうです。これに倣い、私も口癖のようにこう言っています。検討します、はやめてくれ。これをします、と言ってくれないと、ちっとも前に進みません」
(編集委員 矢野寿彦)
ウイルスの増殖を研究
ながた・きょうすけ 81年東京大学薬学研究科博士課程修了(薬学博士)。米留学後、国立遺伝学研究所や東京工業大学を経て2001年から筑波大に移り、13年から現職。19年から国立大学協会会長も務める。
専門は分子生物学でがんのメカニズム解明やウイルスの増殖などを研究し、インフルエンザウイルスの増殖に必要な酵素の構造を解明。「がんを治したい」と研究を始めたが、途中から「遺伝子はなぜ増えるのか」に没頭したという。
お薦めの本
十五少年漂流記(ジュール・ヴェルヌ著)
少年らが自らの力で難関に立ち向かう様にはリーダーの姿勢が描かれています。著者の作品はどれもイマジネーション(想像力)が豊か。イマジネーションこそマネジメントに大切です。
[日本経済新聞夕刊 2023年2月2日付]