厳しいときこそ成長の機会 キャシー松井氏のエール
MPowerPartners キャシー松井ゼネラル・パートナー(下)
私のリーダー論――リーダーとして必要なスキルはなんでしょうか。
「もっとも大事なのは『聞く力』でしょう。人材が多様であればあるほど、個々人の考え方もキャリアプランもさまざま。聞いてこそ、育成につながります。特に自分の場合、GSでアジア太平洋一帯に部下がいました。積極的に聞く姿勢が欠かせません」

父アンディ氏(松井紀潔)と母メアリー氏(松井雍子)は大事なロールモデルという(2015年ごろ)
異なる意見に耳傾ける
――つい自分から話すばかりになりそうです。
「管理職になったばかりのころ失敗しました。部下から別の人へのクレームがあり、なるほどと思わせる内容だったため、すぐ他方を叱責しかけたのです。『自分の言い分もしっかり聞いてくれ』。もっともな意見でした。時間をかけて聞くことが大事と反省しました」
「今後のビジョンを決めるうえでも、自分と異なる意見に耳を傾けるのが大事です。これだけ変化の大きい時代。多くの情報が入ってこそ、正しい方向性を決められます。同意できなくても、なぜこう思っているのか理解しようとするエンパシーは必要です。聞いてもらったということ自体が部下の意識を高めます」
「気をつけたいのは、立場が上になるほど、自分自身に対して厳しい見方をしにくくなることです。匿名でもいいからフィードバックを受ける工夫をすることもリーダーに必要なスキルだと思います」
「率直な意見を聞かせてくれる人の存在は、仕事でもプライベートでも大事な存在です。私は若いころから『自分だけの取締役会(パーソナルBOD)』をつくってきました。メンバーは自分が頭のなかで選んだ人たち。解決できない問題が生じると、取締役会を"招集"する。要するに意見やアドバイスを聞いてみるのです。メンバーには同じ金融業界の人もいますし、業界外の専門家もいます。男性も女性も、また昔からの友人もいます。みなそれぞれに忙しく、ネットワークを保つのには時間も手間もかかりますが、必要な投資です」
――いまの時代ならではのリーダーのスキルは。
「自分がふつうの『人間』であることを示すのは大事です。子どもの用事があるとき、私は職場ではっきり言いました。上司がそうしないと、家庭に時間を割くのはよくない、隠すべきだというメッセージになることを、リーダーは自覚する必要があります」