厳しいときこそ成長の機会 キャシー松井氏のエール
MPowerPartners キャシー松井ゼネラル・パートナー(下)
私のリーダー論起業家精神を持つ
――互いの信頼感にもつながりそうです。
「2001年、乳がんになったときも、隠しませんでした。驚いたのは復職してから多くの相談を受けたことです。家族らが病気になり、少しでも話を聞きたいという人がたくさんいました。自分に答えられることに限りはありますが、何かの参考や励みになれば、と相談を受けました」
――いまは新たな事業に乗り出しています。
「20年にGSを退社し、21年5月に経済協力開発機構(OECD)出身の村上由美子さん、翻訳家の関美和さんと一緒に、ベンチャーキャピタルファンドを立ち上げました。ESG(環境・社会・企業統治)を重視したファンドで、国内8社、海外2社に投資しています。うち4社が女性創業者です」
「3人とも金融業界が長く、親が起業家です。ずっと親の背中を見てきて、起業家のジャーニーがどんなに大変なのかを経験しています。それでも明るい日本の未来をつくるためには起業によるイノベーションが不可欠です」
「ベンチャーは冬の時代、ともいわれます。しかし、厳しいときこそチャンスです。『Every cloud has a silver lining(どんな雲も裏は銀色に輝いている)』という英語のことわざもあります。日本は起業家を志す人が、まだ米国に比べて少ないですが、起業家精神をもったリーダーが日本にもっと出てきてほしいと思っています」
(編集委員 辻本浩子)
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闘病後「毎日がギフト」
週末には必ず教会に通うという。両親がクリスチャンで幼少期から通っていたが、日本で働き忙しくなるにつれ足が遠のいていた。がん闘病を機に「生かされている」ことを実感。「毎日がギフト」と思うようになった。
教会では、仕事やふだんの暮らしとは違った新しい人とのつながりもできた。ホームレスの人に食事を提供するといったボランティア活動もした。「自分の今があるのも周囲に支えられたから。それを社会に返していきたい」
リーダーを目指すあなたへ
ある日「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を使うのをやめました。特に働く母親たちは仕事、母親、主婦の「完璧なバランス」を目指す傾向が強いですが、完璧でなくても、するだけで十分です。