人工流れ星、成功へ信念ぶれず ミッション発信し共有
ALE 岡島礼奈社長(上)
私のリーダー論――なぜ流れ星を選んだのでしょうか。
「きっかけは大学3年生だった01年、しし座流星群を同級生と見たことです。明るい星がたくさん流れて、とても感動しました。一緒に見た友達と『流れ星は小さいちりなんだから人工的に流せるのでは』『シャワーのように流せば、さらに感動的なのではないか』などと話しました」

東大の学生時代(右)、しし座流星群を見てビジネスを着想した
「それが人工流れ星をつかったビジネスのアイデアにつながりました。周囲の人に構想をぶつけると、人工流れ星を流せばこれまで分析できなかった大気圏の上の方のデータも取得できるかもしれない、と助言をもらいました」
組織再建へ、ビジョン共有
――起業後、悩んだことはありましたか。
「起業から3年後、大学教授と実験していた流れ星の球が真空で光りました。技術的根拠が立証されたことを受け、資金を調達し、事業化を本格的に進めました。衛星の技術開発をしながら潜在顧客を開拓していたときでした。当時15人いたメンバーのうち5人が相次いで離職していきました。とてもショックで夜もあまり眠れませんでした」
「辞めたのはほとんどがビジネス部門の人でした。ビジネス部門は会社の理念を理解した上で顧客を開拓します。彼らはエンタメ事業に関わりたいと思っていました。科学への貢献という私の創業の思いと方向性の違いを感じていたと思います。会社のビジョンとしてきちんと共有しないまま仕事を任せていました」
――そこから組織をどう立て直したのでしょうか。
「ビジネスサイドの主要メンバーが去り、会社の求心力が沈みました。私は抽象的な話をするのは得意ですが、具体的な話に落とし込むことが苦手です。そこで会社の方向をいま一度明確にするため、外部の講師を招き、ミッション・ビジョン・バリューの明文化に取り組みました。残ったメンバーには『50年にALEはどうなっていると思いますか』などと問い、未来から逆算して考えました」
「ミッションは『科学を社会につなぎ、宇宙を文化圏にする』、ビジョンは『宇宙を、好奇心に動かされた人類の、進化の舞台にする』です。これらは私の思いが強いですが、バリューはメンバーの思いや性格を分析した共通項である『好奇心』『開拓』『進化』と設定しました。ヒアリングには半年間ぐらいかかりましたが、今につながる大事な時間でした」