人工流れ星、成功へ信念ぶれず ミッション発信し共有
ALE 岡島礼奈社長(上)
私のリーダー論チーム全員が前を向く
――明文化した後、メンバーに変化はありましたか。
「20年に2号機の動作不良が起きたときのことです。2号機は流れ星を流せないことが分かりました。モチベーションが下がり、辞める人が出るのではと心配しました。でも、ふたを開けてみると1人も辞めませんでした。むしろ私が励まされました」
「目指している方向が明確なため、どう立て直すか、次の開発で今回の失敗をどう生かすか、という議論が自然と沸いてきました。ミッションやビジョンの重要性を再認識したと同時に、組織としての強さを感じました」
――新型コロナウイルス禍では社員の行動指針も制定しました。
「社員が30人規模になり、全員と共通認識を持つことが難しいと感じることも多くなりました。コロナ禍ではリモートワークでメンバー同士のコミュニケーションが減りました。普段の行動が自然とミッション・ビジョン・バリューの達成につながるよう具体化した方が良いと思い、メンバーと一緒に新たな行動指針を作りました。『尊敬の念を持ち、誠実でいるか』など6つです。言葉にすることで組織がまとまると思います」
――どんな組織を理想としていますか。
「自走する企業です。リーダーである私の許可を得なくても、ひとつの目標に向かってチーム全員が自然と前を向いている組織です。数年掛けて1つの衛星を作るものづくりの会社なので、IT企業のような出入りが激しい会社は目指していませんが、彼らのような自由に働ける場が理想。いまのALEは理想に近づいていると思います」
(五十嵐沙織)
おかじま・れな 1979年鳥取県生まれ。2003年東大理学部天文学科卒、08年同大学院博士課程修了。米ゴールドマン・サックス証券に入社し、約1年で退社。09年に人工流れ星の技術研究を始める。11年ALE創業。
好きな言葉は「Pale Blue Dot」。米天文学者のカール・セーガンが、米探査機が撮った地球を表現した言葉だ。宇宙では地球は「淡い青い点」にすぎない。「会社が危機に陥ったときも、ちっぽけな悩みだと思えた」
お薦めの本
生物の進化 大図鑑(マイケル・J・ベントン他著)
地球の生命誕生から現在までをまとめた。進化にかかる気の遠くなるような時間と、生命誕生の奇跡を感じる。会社のビジョンにも通じる。