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はやぶさ以上に挑戦的な「大風呂敷」

はやぶさの地球帰還が迫った10年5月、イカロスをあかつきの相乗り探査機として打ち上げた。

打ち上げたイカロスは6月に最大の難関だった帆を広げる実験に成功。太陽光の力での飛行も順調に進みました。帆を広げる実験ははやぶさの地球帰還と時期が重なり、私は二重のプレッシャーを感じていました。幸いどちらも成功しましたが、両方とも失敗したら「極悪非道の大悪人」と言われるかもしれないと思ったほどです。

プロジェクトは私がリーダーでしたが、実際の仕事は当時30歳代前半だった若いエンジニアたちに任せました。若手を育てるにはプロジェクトを立ち上げる経験が大切だと思うからです。イカロスは帆の展開や太陽光での推進といった実験に成功しただけでなく、搭載したガンマ線の観測装置でも科学的な成果を上げています。若手主体で挑んだプロジェクトが成功して、本当によかったと思います。

ただ木星の近くに集まっている小惑星の集団「トロヤ群」まで飛行する本来の計画はまだ本格的に動き出していません。太陽光の力で木星の小惑星群を探査、サンプルを持ちかえることまで視野に入れた計画は、はやぶさ以上に挑戦的です。大風呂敷ともいえJAXAだけでなく協力企業もなかなか積極的になれないようです。

イカロスの検討を始めたころは注目されていなかったトロヤ群ですが、最近は欧米の関心も高まっています。後を引き継ぐ若手にはぜひ世界初の計画を実現してほしいと思います。

[日経産業新聞 2020年6月17日付]

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