高い目標、社員の成長促す シスメックス・家次恒社長
シスメックス 家次恒会長兼社長(上)
私のリーダー論変化を捉え、波に乗る
――学んだ考え方を経営にどう生かしてきましたか。
「当社は白血球や赤血球の数、種類などを調べる血液検査が事業の中心にあります。検査では1人につき1つの検体。つまり、マーケットのポテンシャルは人口規模に比例すると見越して、早くから海外展開を進めました。日本はせいぜい1.3億人で天井が見えていますからね。入社当時、売上高に占める海外比率は2割程度でしたが、今では85%にまで伸び国内と海外が逆転しました。血液検査が欠かせない西洋医学へのシフトも新興国で進み、マーケットはさらに広がっています」

海外展開を積極的に進め、売上高に占める海外比率を85%にまで伸ばした(中央が家次氏)
「リーダーの仕事は船をいかに良い流れに乗せられるかです。水脈を見て、水の流れを見て、後押ししてくれる場所を見つける。見つけてしまえば、あとは社員に一生懸命こいでもらいます。こぐ時には流れが後押ししてくれるから、成功しやすい。逆に、逆流の場所に船を置いてしまうと、こいでもこいでも前には進みません」
「企業成長が、自分たちの努力だけで達成できるというのは勘違いです。もっと大事なのは、世の中の変化を捉えて、波に乗ること。先を見通す力が、リーダー本人はもちろん組織全体にとっても欠かせません」
――とはいえ、社員それぞれが先見性を一朝一夕で身につけるのは難しいです。
「そこで再びリーダーが果たす重要な仕事が、ゴール設定です。将来どうなっていたいのか、どこまで成長していないと生き残れないのか、そんな視点から高い目標を掲げます。知恵を振り絞らなければ、現実との大きな差は埋まりません。高いハードルを越えるために何が必要か、社員にも頭を使って考えさせるのです。当社も目標が高すぎるとよく言われますが、目標との距離をいかに埋めるかを考え抜く過程で、先を見通す力や新たな糸口が得られるのではないでしょうか」