変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

一つのできる理由探す

――高すぎる目標設定に、社員は追いついてこられるでしょうか。

「従来的な社会や企業では、積み上げ型で目標を設定するケースが多々あります。今年に対して来年は何パーセント増やそう、この事業とあの事業を合わせてこのぐらいの合計値を目指そうといった具合ですが、足元の成功体験を延長させてはじき出す目標は低くなりがちです。これでは、将来を見通そうという動機も生まれません」

「目の前の仕事を汗かいて全力で頑張りましょう、というのはある意味で楽なんですよね。体を酷使すれば疲れますし、多少の達成感も得られます。周囲からも『頑張っている』と評価されやすい。本当につらいのは頭を使うことなんです。考えずに達成できるような目標ではいけません。日本の社会や企業が陥りがちですが、単に『頑張れ』『頑張れ』ではあかんのです。多少は成長するかもしれませんが、大きな成長を生むような次なる展開は生まれません」

――目標達成のために特に必要なことは何ですか。

「例えば何か新しい事業を始める時に、できない理由はいくらでもあります。100の理由があるとすれば99はできない理由です。ただ大事なのは、1つのできる理由を何とか見つけることです。できない理由を並べ立てるのではなく、できる理由を探し出すことに頭を使わなければいけません」

(田村峻久)

町工場から世界企業へ
いえつぐ・ひさし 1949年大阪府生まれ。京大経卒、三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。神戸や東京・京橋での支店業務のほか、頭取秘書などを経験した。86年、東亜医用電子(現シスメックス)入社、取締役。社内の制度改革に奔走し、95年に大阪証券取引所二部に上場を果たす。96年に社長に就任し海外展開を進め、海外売上高を85%にまで高めた。2013年からは会長を兼務する。16年から22年まで神戸商工会議所の会頭を務め、地域経済の活性化に貢献した。

お薦めの本


「組織の盛衰」(堺屋太一著)
企業や集団が仲良しクラブのような「共同体」と化してしまうことの危険性を、著者が事例を交えながら説く。ビジネスを海外展開する上で、どんな組織を構築していくべきかを学んだ。
[日本経済新聞夕刊 2023年1月5日付]

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