得意分野こそ部下に託す H.U.グループHD竹内成和社長
H.U.グループホールディングス 竹内成和社長(上)
私のリーダー論――「現場主義」はどのような経験から生まれたものですか。
「CBS・ソニーで営業部門のリーダーになった時から全国を飛び回ることを心がけてきました。部下との関係を深められますし、励ましの言葉もかけられます。『うちのボスは現場をちゃんと見ている』と社員が気づくことで、やる気にもつながると考えてきました」
現場知りつつ役割線引き
「芸能事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)社長時代は、所属アーティストの公演にもれなく足を運んでいました。200公演を超えた年もあります」
「地方公演の打ち上げに明け方まで付き合い、朝の役員会に間に合うように飛行機や新幹線で東京に帰っていました。そこまでしないとアーティストとの距離を縮めるのは難しかったからです。上下関係ではない間柄でどのようなコミュニケーションが必要かを学ぶ貴重な経験でした」
――リーダーは現場にどう向き合えば良いでしょうか。
「現場の仕事と自らの役割に一線を引くことを意識してきました。現場のことは自分が一番よく知っている、という気持ちにとらわれがちですが、どの業界も絶えず変化し、現在の実情を肌で感じているのは最前線に立つ社員たちです。そのことを忘れると意思決定を誤りがちになります。『人は得意分野でこそ最も失敗する』と考えています」
「一対一で部下に向き合う時と、大勢の社員を前にしたときの顔は使い分ける必要があります。一対一なら『俺も迷ってるんだ』と弱さを見せることがあってもいい。ただ大勢の前でリーダーが心の揺れを表に出すべきではありません。スパッと決断したように見えなければ、社員は安心して従えないからです」

新しい臨床検査施設を今年1月に立ち上げた
――臨床検査という異分野への転身に迷いはありませんでしたか。
「ソニー時代も音楽、芸能、アニメ、映画と様々な分野を渡り歩きました。どれもエンタメ業界ですが、文化やソサエティーはまったく違います。分野が変わるごとに一から出直す気持ちでした」
「一方、会社経営という視点に立てば、扱うコンテンツが違ってもそこまで大きな差はないというのが実感です。組織が人間同士の関係から生まれる力学で動く点は変わりません。未知の業界でも、私がリーダーとして果たすべき役割はあると考えました」