熱意で計画と覚悟示す 国際人権団体日本代表・土井氏
ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗日本代表(下)
私のリーダー論資金調達に秘策なし
――どのようにファンドレイズを始めたのですか。
「帰国の1週間前、HRW本部のファンドレイズ部門を訪ねて具体的な手法を相談すると、まずは人脈づくりだと言われました。弁護士時代に政治家や官僚、メディアとの接点はありましたが、経済人とは縁がありませんでした。そこで国際会議に出席している日本の経済人をリストアップすることから始めました」

2006~07年にヒューマン・ライツ・ウオッチ本部でフェローとして勤務(ニューヨークのオフィス)
「大学時代からの友人で、当時ライフネット生命保険の副社長を務めていた岩瀬大輔君にも相談し、著名投資家の谷家衛さんを通じてマネックスグループの松本大CEOを紹介してもらいました。松本さんはダボス会議やクリントン元米大統領が主催する国際会議に参加していたので、どうにかしてアプローチしたかった方のひとりでした」
――プレゼンテーションはうまくいきましたか。
「大量の資料と共にHRWの活動や思いを伝えましたが、あまりの緊張で具体的にどのようなことを申し上げたのか記憶が曖昧です。少なくとも熱意は伝わったのか、その場で複数年にわたる寄付を決めてくださり、大喜びしつつもあっけにとられたことを覚えています。松本さんにご紹介いただいたソニー(現ソニーグループ)元会長兼グループCEOの出井伸之さんにも寄付をいただきました」
――ファンドレイズに必要なテクニックは。
「ファンドレイズに奇をてらったテクニックはなく、人権問題を指摘した報告書や政策提言を通じて積み重ねた成果をありのままに提示して評価してもらうしかありません。ロスCEOが来日した際、ファンドレイズのプレゼンに同席しました。秘策があれば盗みたい一心で興味深く聞いていましたが、HRWの取り組みを率直に説明するというシンプルなものでした」
「彼に問うと『我々は評価に足るいい仕事をしているのだからファンドレイズは難しくない』と言っていました。いい仕事をし、熱意を持って率直に向き合うことが大事だと思うようになりました」