熱意で計画と覚悟示す 国際人権団体日本代表・土井氏
ヒューマン・ライツ・ウオッチ 土井香苗日本代表(下)
私のリーダー論現場の発想力引き出す
――組織の運営で心がけていることはありますか。
「東京オフィス立ち上げ当初は、支援者とどのように関係を築いていくべきか悩みました。そこで、ここでも熱意を持って、『日本を人権のリーダー国にする』という目標実現に向けた行動計画と、そのために私が24時間、365日を費やす覚悟を示すことで、『土井ならできるのではないか』と思ってもらうことが第一歩でした」
「組織の動かし方は『有能で情熱のあるスタッフには自由にやらせよ』が持論のロスCEOから学びました。上からあれこれマイクロマネジメントをしては、現場から自由な発想は出てきません。困難に直面した部下には『私にできることはありますか』と語りかけるのがHRWの文化で、それを心がけています」
――東京オフィスの政策提言の成果を教えてください。
「一番印象深いのは、北朝鮮に関する日本の人権外交の成果です。当時、下野していた自民党の安倍晋三元首相を訪ねて、拉致問題を含む北朝鮮の人権問題について国連を動かす提案をしました。12年の政権交代で再び首相に就任すると、外務省を動かし、日本が主導権を取って13年3月の国連人権理事会による調査委員会設置につなげました。世界の主要国と比べて存在感の薄い日本の人権外交ですが、この委員会設置の結果、北朝鮮の人権状況は『人道に対する罪』だと国際的に認識されるようになりました」
――今後の目標は。
「若い人たちが誇れる職業として人権活動家を選べる社会にしたいです。社会を変える方法のひとつとして、HRWのような政策提言手法で制度を変える活動を広げたいです。大きな組織の後ろ盾がなくても、国や世界を変えることはできます」
(竹内弘文)
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自転車で長距離旅行
悲惨な人権問題に向き合うためには精神的なタフさが必要になる。気がめいることもある。そんなとき、自転車で長距離旅行に出かける。ペダルを必死でこいでいれば、自然と無心になれる。最近も友人と瀬戸内海の島々を結ぶ「しまなみ海道」を自転車で渡った。昔から自転車での遠出は苦ではなかった。大学時代には沖縄の本島や離島を友人と巡ったこともある。軽井沢で住み込みのアルバイトをしたときは、神奈川県の自宅から自転車に乗って往来したものだ。
リーダーを目指すあなたへ
自分が正しいと思ったことは臆せず言ってみる。人から「偽善」とそしられようとも、主張し続ければ批判を突き抜けて周りに受け入れられることがある。これこそ、私が思うリーダーの素質「巻き込む力」の第一歩だ。