マネーフォワード・辻庸介CEO 失敗の後こそ利用者目線に
マネーフォワード 辻庸介CEO(上)
私のリーダー論
マネーフォワードCEO 辻庸介氏
フィンテック業界でいちはやく新規株式公開(IPO)に成功し、時価総額が3000億円弱になったマネーフォワード。そんな日本を代表するフィンテック企業も成長の過程では様々な失敗を重ねてきた。創業者で最高経営責任者(CEO)を務める辻庸介氏(46)は「失敗したときに立ち返るのは利用者目線だった」と語る。
――ソニーからインターネット証券であるマネックス証券に出向され、その後起業に至ります。起業のきっかけはなんだったのでしょうか。
「マネックス証券はソニーとマネックスCEOの松本大さんが共同出資してできた会社で、ソニーに出向枠がありました。自ら出向に手を挙げ、CEO室に配属されました。松本さんが『この事業について調べて』といったら調べるというようなことをしていました。50人程度のベンチャー企業ですから裁量は大きかったです」
「ネット証券ができて株式取引は便利になりましたが、ネット証券に口座を持つ人は数百万人です。株式取引をしない普通の人が気軽に使える家計管理のサービスがあったほうがいいと考え、社内で提案し続けていました。それが家計簿アプリの前身サービスである『マネーブック』です。当時はお金のフェイスブックをイメージしていました」
――松本さんの反応は。
「全く刺さっていなかったです。タイミングも米リーマン危機と重なり、マネックス証券の社内事業としては難しいと判断し、起業を決意しました。マネックス証券にも出資していただきました」
――2012年にマネーフォワードを設立しました。初期の10人の仲間はどうやって集めたのでしょうか。
「マネックス終盤は週末起業といえるものでした。高田馬場にマンションを借り、土曜日の朝9時から正午まで集まってアイデアをぶつけあっていました。当初は盛り上がっていたメンバーにも家庭があります。一人抜け、二人抜けという状態になりましたが、仲間をつなぎとめてくれたのは『今の日本にこんな金融サービスが絶対に必要だ』という熱量でした」