ノーサイド精神、敵も尊重 西武HD・後藤高志社長
西武ホールディングス 後藤高志社長(下)
私のリーダー論「今でも彼は日本に来るときに必ず声をかけてくれます。いつまでも怨恨を抱き続け、あいつの顔は二度と見たくない、ということではなく、激しく戦った後はお互いを認め合うことが大事です」

東大ラグビー部時代はフェアプレーを心がけた(トライを決めているのが後藤氏)
悲観せずチャンスつかむ
――前職の第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)時代も総会屋への利益供与事件などの危機に対処しました。
「当時、企画部副部長を務めていました。頭取ほか多くの役員が退任するなど行内は大変な騒ぎになりました。昔部下として仕えていた常務の杉田力之さんが頭取に昇格。経営の判断材料を新頭取に伝える任務にあたりました」
「誤りがないよう材料を提供しなければならないし、私が判断できるものはスピード感をもって決める必要がありました。明け方まで株主や金融監督庁(当時)への対策や交渉方法を練ったほか、東京地検特捜部との窓口を任されたこともありました」
「今振り返れば『生意気だ』と言われたり、事態の収束後にどこかへ異動させられたりする可能性もあったと思います。ただ、状況が悪化する中でそんなことを考える余裕もなく、自分の信じるところを後先考えずやり切ろうとしました。細心かつ大胆で、私心を持たず、ぶれない、というリーダーとしての心構えはこの時に鍛えられました」
「その後、大口不良債権の処理にあたる仕事も経験しました。大変苦しい思いもしたし、家に無言電話がかかってくるなど危機も感じましたが、度胸が据わりました。多方面から協力を得つつ道筋をつけられたと思います。『艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす』。厳しい経験が私の基礎となり、今に生きていると思います」
――これほど危機が重なると気がめいりそうです。
「私はもともと楽観的な性格なんです。『A negative thinker sees the difficulty in every opportunity』という好きな言葉があります。ネガティブに考える人はどんなにチャンスが巡っても困難をみるという意味です。言い換えるならば、常にポジティブな人はどんなに困難でもチャンスを得られると信じています」