変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「絶えず『自分が今やっている事業を壊してつくり直すくらいの覚悟を持て』とも言われました。日本では変革の難しさを歴史や文化、慣習のせいにしますが、それを変えるのがリーダーの役割。変化なしに成長はありません。やりきるだけの意志があるのかが問われます」

「現状を変えるには、大きなエネルギーと痛みを伴います。多くの人にとっては大変だからやりたくない。でも社会も技術もめまぐるしく変わる中、このままでいいのか。20年30年先を見据え、必要なことを実行するのがリーダーです。もちろん組織内での丁寧なコミュニケーションは重要ですが、合意形成を優先していたら、いつまでも目標にはたどり着きません」

「異物」も生かして成長

――これまでで最もつらかった仕事は何ですか。

「社員のリストラですね。知人に誘われ、05年に米系の保険関連会社に最高業務責任者兼最高財務責任者(CFO)として入りました。日本の金融緩和をにらんでM&Aをすすめ、事業を拡大していく予定でした。ただ大手保険会社の不払い問題などで流れが逆になり、米本社にグループ3社の清算と社員約300人のリストラを命じられました。約200社との契約も解除しなければならず、取引先の方にも社員にも本当に大変な思いをさせてしまいました」

「つらい仕事でしたが、色々な意味で良い経験になりました。誰だって人には嫌われたくない。でも会社を持続させ、発展させるためにベストな選択をすることはリーダーの責任。ぶれずに決断し、行動することが求められます」

――日本では大胆なリストラは敬遠されます。

「何かを得るために何かを捨てる。その決断ができるのはリーダーの条件の一つでしょう。日本の企業を見ていると、これができない経営者が多い。なぜかといえば今が心地よいから。将来のために痛みを取るか、痛みを感じず心地よいままずるずると沈んでいくかのどちらかです。これだけのスピードで世の中が変わっているのだから、新しい価値観やテクノロジーをどんどん入れていかないと追いつきません」

「私は米国時代から、どの仕事でも外部から突然経営に参画する役割でした。組織にとって"異物"です。でもこれが成功要因だと思っています。1つの組織でキャリアを築くと、その組織がそのままの形で永遠に存続すると思ってしまう。心地よい場所で危機感を持つことは難しいのです。若い人や女性、外国人や異業種からの転職者など"異物"を取り込み、生かすことができれば、組織の中で自然と変革が起き、新しい価値観が定着し、成長につながります」

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