変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「ただ、全くもって門外漢だったわけではありません。銀行員時代、日本生産性本部に1年間在籍し、各地の工場を回っていました。どうすれば効率よく生産できるか。日本の工場は世界的にも生産性が高く、当時学んだ経営や生産における管理のノウハウを血液検査装置の販売でも生かせると考えました」

銀行員時代、日本生産性本部で生産管理について学んだ

銀行員時代、日本生産性本部で生産管理について学んだ

「東亜医用電子に入社した1980年代は、血液検査室で働く検査技師の方々が米国で大きく減っていた時代です。エイズウイルス(HIV)の流行が叫ばれ、血液を取り扱う仕事は危ないと考えられていました。そこで、自動化・省力化が進む当社の装置の売り文句を刷新しました。少ない人手で安全に検査できる、検査室のコンセプトを前面に押し出したのです。導入元の病院からすれば人件費もぐっと抑えられます。工場で生産管理を学んでいたからこその発想だったと思います」

変化への対応常に考える

――とはいえ、十分な専門知識がないと経営に尻込みしてしまいそうです。

「経営者が技術の細かい所まで完全に理解する必要はありません。そこはもっと専門分野の方に任せればいいのです。忘れてはいけないのは、むしろ好奇心。新しい技術が出てきたときに『これは一体何やの?』と素直に興味を持つ素質はリーダーとして欠かせません」

「思い出すのは、90年代後半の出来事です。世間で活発に議論されていたゲノムの詳細について社内の技術者に意見を求めたところ、詳しく分かる人材が多くはいませんでした。『これではあかん』と思い、ライフサイエンス分野の研究を担う中央研究所(神戸市)をすぐに開設しました。研究開発の加速はもちろん、施設の存在によって専門人材も多く入ってきました」

――好奇心を持つだけで十分でしょうか。

「もう一つの欠かせない要素はイマジネーションでしょうか。好奇心を持って新しい何かに触れた後、『こんな新しい技術があればこんな世の中になるんちゃうか』『こんなものに使えるんちゃうの』と脳内でイマジネーションを働かせるのです」

「例えばインターネットや新型コロナウイルスはライフスタイルや人々の行動様式をガラリと変えました。ネットによって手軽かつ安価に海外の社員と会議ができるようになり、新型コロナでその習慣はさらに定着しました。今で言えば、量子技術。『量子の世界って一体何やねん』と大枠を捉えてみます。何も詳しく分かる必要はありません。世の中の流れをどう変える可能性を秘めているのか、想像すれば様々なアイデアが出てくるはずです」

「今後の変化がイメージできれば、その変化にどう対峙していくべきなのかを次に考えます。今までの成功体験を引っ張っていってはいけません。企業経営というのは環境適合とも言えます」

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