精米工場に入り浸った学生時代 現場見てこそ人は育つ
神明ホールディングス 藤尾益雄社長(下)
私のリーダー論
社長自らコメの収穫作業にあたることも珍しくない
「農家の人がどんな思いでお米作ってるか、まず社員が知らないといけません。その上で、スーパーのバイヤーさんや消費者に伝えていくことが大事なんです。社員にはよく『バイヤーさんを産地に連れて行け』と伝えています」
「もちろん、産地だけじゃありません。これはもはや趣味にもなってくるんですけど、私、スーパーとかコンビニに買い物行くのも好きなんです。コメ売り場だけじゃないですよ。いろんな売り場で『今こういうのがはやってんねんな』とか見てて楽しいですやん。なんか見つかりますやん」
「回転ずし、牛丼チェーンも週1、2回は行きますね。この間は日曜日の夕方に牛丼屋に行きましてね。テークアウトがむっちゃ混んでて中のイートインがすいてるんです。異常現象や思いましたね。日曜日の夜、お父さんがテークアウトを買いに来る。そんな光景が普通になってきています。こういう消費者の嗜好の変化は実際に行ってみないと分かりません」
「百釜炊飯ノート」を復活
――経営理念は社員に響いてきていますか。
「フットワークは軽くなっていますね。うちの社員のいいところはそこなんです。スーパーも外食も皆こまめにチェックしてますよ。『どうせ食べるんやったら得意先で食べよ』『どうせ食べるんやったら競合する店で食べよ』と根気よく言い続けて私が率先してやるもんだから、皆が日常生活に取り入れてくれるようになりました。そうやっとるうちに、自然とコメのことが好きになりますやん。元町の牛丼チェーンで社員と会うこともたまにありますね。向こうは驚いているかもしれませんけど」
――伝統の研修を復活させたと聞きました。
「今、社員には原点に返ることをやらしてます。『百釜炊飯』という研修です。入社したらすぐに『百釜炊飯ノート』というものを渡されて、毎日コメを炊かなあかんのです。データを記録して、炊いたコメを上司にも食べてもらって、炊飯ノートをつけていくんです」
「毎日やっていれば、コメに対する愛情も、農家の人に対する感謝も自然と出てきますよ。私らの時代にはあって、しばらくやめていたんですけど、原点回帰で復活させました」
「最近は、『こんなん言うたらパワハラや』とか『今の若い子は怒られたことないから』とか『ゆとり教育だから』とか、よく言いますよね。でも、本当にそうなんかな、本当にそれが人材育成につながってるんかなと疑問に思うんです。やっぱり、いつの時代も努力は絶対必要ですよ。そりゃ我々の時代のようなスパルタ教育は難しいかも分からないけど、『今の子は』っていうんじゃなくて、内容的には我々の世代とほぼ変わらないことを教えていくべきなんです」