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自己主張学んだ海外生活

――リーダーシップに目覚めた原体験は何でしたか。

「外交官だった父(都倉栄二氏=イスラエル、スウェーデンなどの大使を歴任)の赴任で小学校と高校の計7年間をドイツ(西独)で過ごした経験が大きいですね。小学校はアメリカンスクール、高校はギムナジウム(中等教育機関)に通いましたが、日本人は僕一人。好き嫌いにかかわらず日の丸を背負わされ、負けん気に火が付きました」

「鮮明に覚えているのが映画『戦場にかける橋』。映画を見たアメリカンスクールの級友から『日本人は残酷だ』と激しく批判されました。でも負けてはいられません。日本の立場を代弁する形で反論し、相手に理解を求めた。正義感が強い方だし、3人兄弟の長男でリーダー気質だったから頑張りました。意見を堂々と主張すれば相手も存在を認めてくれるものです」

――不利な状況を切り抜けるのは外交そのものですね。

「自然に身に付けた処世術かもしれません。日本の立場の難しさはありますが、無勢だからこそ見えるものもある。アメリカンスクール時代、米国人の級友と歩いていたら突然、ドイツ人から雪玉を投げ付けられたことがあります。目の前で米独間の壮絶な雪合戦が始まり、僕はどちらにも加担できなかった。『ドイツ野郎の味方なのか』と米国人の級友になじられましたが『日本は米独戦には参加しないんだ』と中立を宣言し、その場を立ち去りました」

(編集委員 小林明)

「和洋折衷」ヒット量産


とくら・しゅんいち 1948年東京生まれ。外交官の父の赴任で小学校と高校をドイツ(西独)で過ごす。幼少からクラシック音楽に親しみ、青春時代はロック音楽にも熱中。古風と現代が混在した和洋折衷の独特な感覚を身に付ける。
 学習院大学在学中に作曲家デビュー。「狙いうち」「五番街のマリーへ」「ペッパー警部」「あずさ2号」などヒット曲を量産した。日本音楽著作権協会(JASRAC)会長、横綱審議委員会委員などを歴任。2021年4月文化庁長官就任。

お薦めの本


「バルト海のほとりにて」(小野寺百合子著)
 独ソ開戦、ヤルタ密約など戦時下に赴任地スウェーデンから正確な機密情報を本国に打電し続けた小野寺信・陸軍少将の妻による回想録。広い視野、冷静な判断、人脈の大切さを痛感できます。
[日本経済新聞夕刊 2022年7月14日付]

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