変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

経験と組織の力を融合

――インドでの戦略と実行の融合事例はありますか。

「昨年8月に3億ルピー(約5億円)を出資してインドでバイオマス関連のサプライチェーン(供給網)マネジメント事業を展開するPRESPL(パンジャブ・リニューアブル・エナジー・システムズ)に参画しました。農家とのネットワークを生かし、各地で集めたコットンや稲わらなどの農業残さを貯蔵し、ブリケットと呼ばれるバイオマス燃料を製造・供給しています」

三井物産はバイオマス関連事業を手がけるPRESPLに出資した(左から2人目がアシュラフ社長)

三井物産はバイオマス関連事業を手がけるPRESPLに出資した(左から2人目がアシュラフ社長)

「石炭への依存度が高く野焼きも多いインドでは、都市の大気汚染といった問題があります。PRESPLでは農家から農業残さを有償で引き取り、石炭を熱源として使用する工場に代替燃料として供給します。二酸化炭素(CO2)などの排出量を減らし、貧しい地方での雇用創出にも貢献しています。物事の本質を探って現場から社会課題を見つけ、多様なステークホルダーの経済的な価値に転換していく試みの一例です」

――現地事情に精通したトップならではの強みを組織力と融合させたのですね。

「私一人の力ではありません。もともとPRESPLとの付き合いがあったのはインド三井物産のエネルギー部です。同じく出資先で中東・アフリカを拠点とするETG社との事業連携の提案・推進では、中東地域などでの駐在経験が生きています。三井物産のネットワークを活用して、インド国外にも事業のスケールを広げていきます」

(ムンバイ支局長 花田亮輔)

親戚の話で日本に関心


Faisal Ashraf 1966年インド生まれ。87年にデリー大学を卒業後、現地IT企業のNIITで勤務。大倉商事を経て、98年に三井物産入社。日本やマレーシア、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)拠点を経て、2020年から現職。
東芝の中東拠点で働いていた親戚に「幼い頃から日本の技術やマネジメントの話を聞いていた」。各地の歴史や文化を学ぶなか世界共通の倫理規範に関心を持ち、新渡戸稲造の「武士道」などを通じて日本の近代化への理解も深めていった。

お薦めの本


巨象も踊る(ルイス・ガースナー著)
米食品大手から米IBMに転じて、機敏に動けない象に例えられた同社の立て直しを成功に導いたガースナー氏による1冊。成長に向けて私たちも常に変わっていく必要があると教えてくれる。
[日本経済新聞夕刊 2022年11月17日付]

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedoNIKKEI SEEKS日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック