セイコーG・服部真二会長 時代の一歩先、社員とゆく
セイコーグループ 服部真二会長(上)
私のリーダー論消費者無視勇んで失敗
――世界より先に進むということが信条でしょうか。
「創業者、服部金太郎の言葉に『すべて商人は、世間より一歩先に進む必要がある』というものがあります。この信念が当社を支えてきたと思いますし、私も大切にしています。一方で、世間と離れてしまうほど何歩も先へ行ってはいけない、という訓戒も残しています。私は一度その失敗を犯してしまいました」

精工舎時代は新しいプリンターの商品化に挑んだ(一番左が服部氏)
――失敗とは。
「精工舎(現セイコータイムクリエーション)に入社して間もない頃でした。ほかにないものを出そうと、新しい機能を盛り込んだプリンターを出そうと思い立ちました。時代を先取りしようと意気込んだものの、あまり売れなかった。当時コンピューターで作成するプリンターソフトの機能が充実しておらず、こだわって載せた機能の必要性が大してなかったのです」
「時代の一歩先ではなく、二歩も三歩も行ってしまった。消費者の需要を確かめなかったのは失敗でした。今思えばあと2年ぐらい待ったら良かったかもしれません」
――この失敗から学んだ教訓は何ですか。
「新しいことに取り組むときの準備の大切さです。アストロンは使う人たちが不便に感じないよう、普通の時計と変わらない大きさにまで改良してから発売しました。機能さえ良ければと改良前に売り出していたら失敗していましたね。カラープリンターの件はいい勉強になりました」
(津兼大輝)
スポーツチームを組成
はっとり・しんじ 1975年慶応義塾大学卒、三菱商事に入社。84年に精工舎(現セイコータイムクリエーション)に入社。2001年セイコープレシジョン社長、03年セイコーウオッチ社長、10年にセイコーホールディングス(現セイコーグループ)社長。12年に現職。70歳。
音楽やスポーツを好み、自社のアスリートチーム「チームセイコー」を持つ。8月にハンガリー・ブダペストで開催される世界陸上に向け、所属する山縣亮太選手らに期待を寄せる。
はっとり・しんじ 1975年慶応義塾大学卒、三菱商事に入社。84年に精工舎(現セイコータイムクリエーション)に入社。2001年セイコープレシジョン社長、03年セイコーウオッチ社長、10年にセイコーホールディングス(現セイコーグループ)社長。12年に現職。70歳。
音楽やスポーツを好み、自社のアスリートチーム「チームセイコー」を持つ。8月にハンガリー・ブダペストで開催される世界陸上に向け、所属する山縣亮太選手らに期待を寄せる。
お薦めの本
ハート・オブ・ビジネス(ユベール・ジョリーほか著)
米家電量販店ベスト・バイの経営再建録。「ビジネスは"人"である」と再確認でき、パーパス(存在意義)経営の実践へ背中を押してくれます。
[日本経済新聞夕刊 2023年4月20日付]