変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

次世代に損負わせない

「自分で別会社を起業できたかもしれませんが、当時苦しんでいたこの会社が潰れてしまうと、ベンチャー業界で『水問題に取り組むのは難しい』という見方が広がりかねません。WOTAのチャレンジを成果に結びつけた方が、意味があると思いました」

――大学時代には建築家・隈研吾氏のスタジオでも学びました。

「色々な面ですごみがあります。隈先生は膨大なプロジェクトについて品質をコントロールしています。デザインだけじゃなくコストや性能にも関わり、何百人を動かして形にしていく。組織を動かすために人も育てないといけません。それだけでもすごいのに、従来と全く違うコンセプトを打ち出して、実務に落として表現できている」

「面白いアイデアを出せるのは重要で、それが全くないとオリジナリティーは出せません。ただ、ゴッホもピカソもデッサンが卓越していたように、アイデアを具現化する力が必要です。製品にする時に細部までアイデアを行き渡らせ、どの過程に障害があるのか気づく力です」

――WOTAとして、水問題解決の目標はありますか。

「人類が出す排水よりも、水再生で処理される排水が多い、あるいはトントンという状態を目指しています。要は全員が水再生に関わるということです。その場しのぎではなく、気候変動や人口の増減が起きても20年、30年後の世代が割を食わない水事業をつくりたいです」

(向野崚)

◇  ◇  ◇

1日の1割「鍛錬」に

1日の時間割を決め、10~15%を「鍛錬」の時間に充てている。散歩をしながら身の回りの全てのことを振り返るほか、建築家や経営者など刺激を受ける人に会いに行くことも多い。

建築物も製品づくりも、多種多様な人が関わり、期限に追われながらやり直しがきかない成果物を仕上げる点で似ている。「才能ある人のこだわりをどう生かし、複雑なモノをいかにシンプルにするか。同じ気質の人と話すと気づきがある」という。

まえだ・ようすけ 1992年徳島県生まれ。18年東大大学院で建築学を修了。11年東大進学のために上京し、東日本大震災後の断水を経験。隈研吾氏ら建築家の指導も受けながら、都市インフラや衛生設備を学んだ。

リーダーを目指すあなたへ


リーダーとして理想に向かう時、途中で得た技術や仲間、誰かに知ってもらえることによって引力が働き始め、理想は若干ぼやけていきます。得た物に固執せず、常になにも持たない者として理想を描くことが大事です。
[日本経済新聞夕刊 2022年9月22日付]

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