組織超え、専門人材育てる 産業革新投資機構・横尾氏
産業革新投資機構 横尾敬介CEO(下)
私のリーダー論
産業革新投資機構CEO 横尾敬介氏
官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は2018年、民間出身の役員9人全員が辞任し、事実上の活動休止に陥った。横尾敬介最高経営責任者(CEO)は組織を立て直し、再びリスクマネーの出し手によみがえらせた。日本は米国に比べて投資ファンドの歴史が浅い。投資を通じて次世代産業を育てるには、「業界全体での専門人材の育成が必要だ」と説く。
――JICを所管する経済産業省と対立し、経営陣が辞任する事態に発展しました。
「JICの事業にスタートアップ投資と企業の事業再編促進という2つの柱があります。官民ファンドは、国のお金、言い換えれば、国民のお金を使っています。いきなり海外に拠点をつくり、ファンドを運営する構想について、関係者間で理解を得ることは、なかなか難しかったのではないかと思います。また、当時報道された報酬体系についても、関係者間での意思疎通がうまくいかず、大変残念な結果になったと考えます」
――空席だったCEOに就任し、何から始めましたか。
「組織は崩壊状態でした。JICは財務省がお金を拠出して経産省が企画を担います。社員は両省を中心に他省庁からの出向者と中途採用者で構成します。組織が整うまで、新規の投資業務を停止しました」
「まず取り組んだのはJICのあり方を再定義することでした。その一つがプロの投資知識のプラットフォームということです。一人ひとりが何のために働いているのか、または、働きたいのかを全員と面談することで確認し、理解することに努めました。役員からアシスタントに至るまで全員です」
――経産省との関係をどう修復しましたか。
「経産省からは体制を早急に整備して投資を始めてほしいとの要望がありました。ただでさえ1年遅れていたわけですから。まず投資方針を作り直しました。JICが投資先のファンドとともに民間事業者や関係団体、政府と連携しやすいように情報交換や人材交流できるようにしました。その上でJICが2035年に向けて日本のリスクマネーの好循環を創出していく投資機関となると示しました」