変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

――経済同友会の役員の経験が生きたわけですね。

「経済同友会はいろいろな経営者が個人の立場で発言をされます。中には強硬な発言もあります。その中で妥協点を見いだす作業を続けてきました。政府関係者から『これは政府の意向と合わない』と指摘を受けることもありました。同友会での4年の経験は根回しの訓練だったのかもしれません。言いにくいこと、言わなければいけないことの整理がつけられるようになりました」

JICの立て直しに尽力した(CEO就任後の記者会見)

JICの立て直しに尽力した(CEO就任後の記者会見)

再生はパーパス再定義から

――経営者として現場の社員との意思疎通で気をつけていることはありますか。

「マネジメントは全てに口出しはできません。だから任せられる人材の配置が重要なのです。JICのベンチャー投資子会社の社長を投資家から評判が良い人物に交代しました。一方、未公開株ファンドを運営する子会社の社長は元リクルートホールディングスの方を採用しました。事業再編やビジネスモデルの転換にきちんとした考え方を持っている人を選任しました」

――役員会での議論は活発ですか。

「投資はまず最高投資責任者(CIO)以下で個別案件をもみ、その後に私も入って議論します。最後に産業革新投資委員会という枠組みで決めます。多くのフィルターをかけています。12月16日時点で28件のファンド投資を決定し、出資約束額は1兆5000億円を超えています」

「ファンドは大人数で動かす組織ではありません。人が重要であり、リーダーの素養を持つ公正な人を配置しなければなりません。多くの人の目を通すことも大事だと考えています。怖いのは権力のある人に忖度(そんたく)してものをいえず悪い案件が紛れ込んでしまうことです」

――日本のリスクマネーは欧米と比べて少ないです。なぜ増えないのでしょうか。

「米国は1970年代から投資ファンドがあるのに対し、日本は2000年代前半からと歴史が短いことが大きい。もう一つは銀行の体制が整い過ぎてリスクマネーが育ちませんでした。高度経済成長期は良かったのですが、時代が変わるなかで健全性を大事にする銀行本体ではリスクマネーの提供は難しいです」

「個人では投資に対する価値観が低いと感じます。日本人はお金を儲けることを美徳としてとらえられない。日本証券業協会で投資教育を推進していた時に現場の先生から『株は教えられない』という反応が多かったです」

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