ハルメクHD社長・宮沢孝夫氏 先入観排し企業を再建
ハルメクホールディングス 宮沢孝夫社長(上)
私のリーダー論
ハルメクホールディングス社長 宮沢孝夫氏
50代以上の女性向け定期購読誌「ハルメク」は、書店で販売しないにもかかわらず、47万部の発行部数を誇る。運営するハルメクホールディングスの宮沢孝夫社長(66)は、14年前に経営破綻した前身の会社から事業を引き継いだ。先入観や固定観念を排し、「社員一人ひとりが自分の意思を持って働ける」組織づくりで、発行部数で女性誌最多のメディアに育てた。
――2009年に経営破綻した前身の会社から全ての事業を引き継いだ、いきいき(現ハルメク)の社長に就きました。
「それまで社長を務めていたコールセンター運営の会社を辞め、経営のプロとして次は破綻企業の再建に挑戦したいと考えていました。ご縁があって、スポンサーの投資会社から声をかけてもらい、雑誌『いきいき』(現ハルメク)や通販といった事業内容を調べるうちにシニア向けビジネスの可能性が大きいことに魅力を感じました」
――社長就任から3年ほどで業績を回復させましたが、その後は発行部数が伸び悩む時期がありました。どのようにして低迷を抜け出したのですか。
「一般的に業績が低迷すると、理由を外部要因に求めがちです。雑誌であれば、構造的な出版不況だから部数が伸びないのは仕方ないという意見が出てきます。通販もネットショッピングに顧客を奪われているという分析で納得してしまいます。低迷の理由は、自分たちがお客様を理解していないことにあると分析しました。本当にお客様を理解するための議論をしているのか、社員に問いかけました」
「通販事業では補正下着を扱っていましたが、販売する理由は『シニア女性には体形を補正したいニーズが強い』という思い込みでした。自分たちの解釈を優先してビジネスを考えていました」
「当時の会議では、企画などを議論する際に『それっていきいきらしくない』という言葉も多く聞かれました。この『いきいきらしい』は雑誌創刊時から使われていました。先入観や思い込み、主観的な見方に基づいた『らしい』かどうかで判断することは、結果的にお客様を理解することを怠ってしまいます。シニアの女性が望んでいることや困っていることなどを、先入観を持たずに等身大で理解する意識改革を促しました」