変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

文化への感度問う時代

――事務所内にランドスケープやプロダクトデザインなど新セクションを設置したそうですね。

「これまで外注していたことを中に取り込みました。これも組織内に異質性を増やす取り組みです」

「ある日本酒のつくり手から聞いた話です。仕込みに使う木おけを製造する会社がなくなった。経済的に成り立たなくなったからです。そこで彼らは自分たちで木おけをつくり始めました。そのうち技術も上がりユニークなものもできる。自分で内部化すると、値段じゃない別の価値を生むのですね。そういう発想ができる会社は成長できる。採算性の追求は手工業を、ひいては日本を結局弱くしました」

――事務所を次世代に継承するために、所内にアーカイブ部門をつくりました。

「これまでの仕事のすべて、作品のディテールや開発した素材、雑誌の記事などに至るまでを保存する。会社の文化というものを確立しておけば、僕がいなくなっても、それ自体が成長していける」

「工業社会の時代とは違って、今はつくるものの文化的な価値が重要になりました。僕が最近、ファッションデザイナーやシェフに関心を持っているのは、彼らが、ものづくりの思想、環境や社会が抱える問題に対するスタンスまでを含む会社の『文化』をきっちりつくりあげているから。文化に対するリーダーの感度が問われる時代になったともいえるでしょう」

(編集委員 窪田直子)

◇  ◇  ◇

空の旅で気分を刷新

移動が多い生活です。新幹線や飛行機の中では本を読むことが多い。ジャンルにはこだわらず、書店で目にとまったものをさっと手に取って乗り込みます。なかでも長時間の飛行機での移動はいい気分転換になります。一気に集中して仕事を片付け、飛行機に乗ったら、それから12時間くらいは完全に気を抜いて、頭をブランクにできます。旅先での食も楽しみ。食べるものがおいしい場所の仕事は、設計料が少し安くても、つい引き受けてしまいます。

くま・けんご 1954年神奈川県生まれ。東京大学大学院修了。日本設計事務所(現・日本設計)勤務、米コロンビア大客員研究員などを経て、90年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。初期作「M2」で脚光を浴びるが、バブル経済の破綻で仕事が途絶える。
10年近い地方での仕事を通じて木や石などの素材を再発見し、独自の作風を確立。巨大な公共建築から小屋の開発まで多種多様な作品を世に送り出す。「10宅論」「建築的欲望の終焉(しゅうえん)」ほか著書多数。

リーダーを目指すあなたへ


組織をつくろうとするより、人を好きになり、コミュニケーションを大切にしてください。言葉は大事。僕は若い所員たちに「どんなに君がステキな夢を描いても、人を説得できないとダメだよ」と言い続けています。
[日本経済新聞夕刊 2023年1月26日付]

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